オセロ
東京都にある聖凛学園に、一人の教師が赴任してきた。
黒岩 優――クロイワ ユウ――
長身で短髪のメガネをかけた優男。
どこか頼りげない雰囲気を出すこの男を生徒たちが舐めないはずがなかった。
そもそも、こんな上品の名前の割には入学してくるのはやんちゃな生徒ばかり。
不良、と呼ばれる者たちが多い。
現に、授業中の彼らの様子を紹介すれば、一目瞭然だ。
出席者が、半分居れば、いいほうだろう。
更には、授業に出る者も、堂々と携帯電話を弄ってみたり、生徒同士の私語。最悪、喧嘩まで勃発することがある。
これが熱血教師ならば、説得するのだろう。
様々な言葉を使い。
だが、この男はしなかった。
ただ、笑顔で挨拶をして、そして、その笑顔で授業を行う。
誰も聞いていないであろう言葉を発し、誰も読まないであろう黒板に文字を書き。
余程、温厚な人なのか、それとも、ただのバカなのか。