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とあるカタバミの詩

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僕は道端の カタバミ
すみっこにいる まだ小さいカタバミ
一人の少女がやってきて
四つ葉のクローバーだとはしゃいだ

後でやってきた男の人が
それはカタバミだと言うと
少女はがっかりした表情(かお)をして
僕の前から立ち去った

僕はカタバミ
クローバーにはなれないよ
僕は幸せを運べない


僕は道端の カタバミ
すみっこで 大きくなったカタバミ
女の人がやってきて
四つ葉のクローバーだと僕を摘んだ

彼女は僕を押し花にして
栞を作って本に挟む
彼女が読書をする姿を
僕はただただ眺めてる

僕はカタバミ
クローバーじゃないよ
君に幸せは運べない


僕は栞になった カタバミ
閉じ込められた 押し花のカタバミ
彼女は僕を取り出して
ありがとうと微笑んだ

今日は素敵な人に会ったのだと
危ないところを助けてくれたのだと
僕が運んだ幸運だと
恋した彼女は喜んだ

僕はカタバミ
クローバーになりたいな
君に幸せを運びたい


僕は栞になった カタバミ
数年経っても 大事にされたカタバミ
彼女は僕を取り出して
本当にありがとうと微笑んだ

彼女は彼と結婚するのだと
助けてくれた彼と結婚するのだと
この幸運は僕のお陰だと
優しく僕を両手で包んだ

僕はカタバミ
クローバーになれるかな
君に幸せを運べるかな


僕は栞になった カタバミ
数十年経って ボロボロに乾いたカタバミ
僕は彼女の棺に入った
大事にしていたものとして

君の最期の表情(かお)は知らない
今の君の表情(かお)も知らない
君は笑っていただろうか
君は幸せだっただろうか

僕はカタバミ
僕はクローバーになれましたか
僕は君に 幸せを運べましたか
作品名:とあるカタバミの詩 作家名:秋桜