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【青エク】(サンプル) COME SEE ME

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きゅうじつのへいおんとぱんでもにうむ




「よく歩いたな」
「そうだね」
 双子が充実感に溢れた声で呟く。手に提げた袋ががさがさと揺れた。
 今日は珍しく任務も、塾もなにも無かった土曜日だった。双子が揃う完全な休日は久しぶりだ。季節はずれに暖かくて、寝起きの悪い燐が張り切って起きた。そしていつも睡眠時間が不足気味の雪男も、かつて無いほどすっきりと目が覚めた。けして早くはないが、それでも午前中のそこそこ一日を長く使えるだけの時間で、双子はそのことにすっかり気を良くした。
 洗濯物と布団を急いで干して、二人は勇んで正十字学園町の散歩に出かけた。鍵を使わずにのんびりと町を歩くのは滅多にないことだ。二人が暮らす寮と買い物に行く町並みとは少し違った通りが楽しかった。途中で美味しそうな和菓子屋を見つけて、おやつと食後用に饅頭を買った。昼ご飯は個人でやっている総菜屋でお弁当を買って、近くの公園でひなたぼっこをしながら食べた。
 夕方にさしかかったところで、ぶらぶらと帰途につく。珍しいことに喧嘩もしなかった。
 燐は急にいたずら心が沸いて、雪男の手を取った。
「兄さん?」
「たまにはいーだろ」
 手を離そうとする弟の手をぎゅ、と握り込む。へへ、と笑いかければ、雪男も少し照れくさそうに笑う。
 いい一日だ。
 うん。いい日だ。
 家々の間に沈んでいく夕陽が空を真っ赤に染める。まぶしくて暖かいのが妙に嬉しい気持ちにさせる。燐は雪男の手を握ったまま、ぼんやりと夕焼けを眺めた。
 すぅ、と最後の光が家の下に沈んで消えた。まだ多少は明るいが、それでも影が濃くなった気がする。
「帰ろうか」
「そーだな」
 今日は雪男の好きな刺身にしてやろう。ご飯はあらかじめといである。後は水加減をして炊けば良い。味噌汁はキャベツと油揚げを入れて、副菜にイカと里芋を煮たのを出そう。
 ちらりと目の端に影が動くのを見た。考えるより前に身体が動く。
「あぶねぇ!」
 燐は躊躇わずに雪男を突き飛ばした。不意打ちを食らった雪男はうわ、と驚きの声を上げて二、三歩よろめくと珍しくバランスを崩して膝をついた。
「な…、なにするんだ、兄さん」
 雪男が抗議する。それはそうだ。
「悪魔だ!」
 だがな、兄ちゃんはお前を守ったんだぞ。小さくて見たことのない悪魔だ。毛むくじゃらで、動物とも人のような姿とも思えない何かが、二本足で歩いていたのだ。
「…どこ?」
「そこ!」
 不機嫌な声に影がひょこひょこと歩いていった方向を指さす。
「いないけど」
「いたんだって!」
 顔から表情が消える。弟が腹を立てた時の癖だ。まだ軽い方だけれど。はいはい、と雪男が肩をそびやかして歩き出す。
「歩きながら寝ないでよね」
「俺器用だな、って、しねーよ! 嘘じゃねーって」
 だが、燐が幾ら言っても、雪男は全く取り合わない。急に二人の空気が悪くなる。
 さっきまであんなに仲が良かったのに。このまま帰ったらどちらからともなく手を伸ばして、そのままあれやこれやになだれ込んでしまうような、確信めいた予感があった位なのに。そんな空気などまるで無かったようによそよそしくなる。
 燐は必死に自分が見た悪魔を説明するが、そもそも説明がヘタクソな上に、焦ってさらに要領を得ない。雪男の顔が険しくなっていく。
「絶対居たんだって!」
「猫か犬を見間違ったんだろ」
 はぁ、と大げさなほどに呆れた溜め息を吐く。その頭から自分の言うこと否定するような態度にカチンとくる。
「お前兄キのゆーこと……」
「危ない!」
 声とともに、くるりと風景が回転する。ごろりと転がって視界が元に戻ったと思うと道路に尻餅をついていた。
 雪男が目にも留まらぬ早さで燐の奥襟を掴んで、なぎ倒すように放り投げたのだと理解する。なにをするのだと文句を言おうとして弟を見上げると、何処に隠し持っていたのか、祓魔用の銃を構えて滑らかに初動操作を終え、引き金を絞ったところだった。がうん、と轟くような銃声が住宅街に響いた。
「おま……」
「朧車だ」
「おぼろとうふ?」
 にがりはあったはずだ。豆乳があっただろうか? それにしても銃をぶっ放しながら豆腐の話をする理由が判らない。頭を捻ってると、雪男が食べ物から離れてよ、と溜め息を吐く。
「大丈夫?」
 燐を気遣うように雪男がしゃがみ込む。
「ああ」
 放り投げられたと言っても、燐が多少の受け身を取ること位は承知していただろう。その通りで無意識に地面に叩きつけられる前に自ら転がって勢いを殺した。
「にいさん…」
 雪男の肩越しに、またちらりと影が揺れた。
「伏せろ!」
 こちらは雪男のように気遣う間がない。肩から突き倒すように払い、降魔剣を抜き上げると反動をつけずに体を起こして飛び出す。