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5歳の凛ちゃんがあらわれたら

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別れのまえに



現在の自分たちのまえに五歳の凛があらわれたのではなく、五歳の凛がいる過去に自分たちが飛ばされたことが判明し、岩鳶高校水泳部四人と鮫柄学園水泳部の似鳥は未来に帰ることになった。
状況のわかっていない凛に、五人は別れを告げる。
「お別れするのはつらいけど、何年か経ったら、また会えるからね、凛ちゃん」
「凛さん、またお会いするのを楽しみにして、日々精進します」
「凛先輩、今度は先輩に選んでもらえるように、頼れる男になれるよう頑張ります」
「凛、またね」
凛の正面に遙は腰をおろした。
無表情のまま、淡々と語りかける。
「凛、できれば覚えていてほしいんだが、俺のキャラクターソングとおまえのキャラクターソングの温度差がひどい」
「はるちゃん、なに言ってるの!?」
「俺がおまえとの思い出を大切にしていることを歌いあげているのに対し、そのアンサーソングであるはずのおまえの歌は、友情とかジャマな感情は捨てて、とか、シラケさせんな、とか、最高で張り合えなくちゃ意味がない、とか、水泳のライバルである俺以外は求めていない感じなのはどうかと思う」
「遙先輩、そのことは今はいいじゃないですか、大人げないですよ」
「デュエットソングでやっと両想いになれたかと一瞬喜んだが、よく聴いてみたら、俺がおまえ個人のことを歌っているのに対し、おまえはやっぱり俺のことを水泳のライバルとしてしか見ていない気がした」
「七瀬さん、凛先輩は水泳中心なんです。しょうがないんです!」
「このことをできれば覚えていて、未来でふたたび会ったときは、俺の歌に応えるような歌を歌ってほしい」
「ハル、凛が困ってるよ。もう行こう」
優しく真琴にうながされ、遙は立ちあがった。
それから、五人はつらそうな表情になったが、思い切って、凛に背を向けた。
後ろ髪を引かれる思いで五人はまえに向かって進む。
少しして。
びええええええええ、と大泣きする声が背後から聞こえてきた。
状況はよくわからないものの、五人が去っていくのを凛は認識したらしい。
「凛……!」
遙はふり返った。泣いている凛のもとへと駆けつけようとした。
だが、遙の両側にいる真琴と怜が遙の腕をガシッとつかんだ。
「遙先輩、つらいのはみんな同じです。しかし、僕たちは未来に帰らないといけないんです」
「そうだよ、ハル。未来に帰って、そこにいる凛と会おうよ」
「……」
こうして、五人は未来へと帰って行った。




遙の家に、凛が来ている。
真琴や渚や怜もいたのだが、みんな、それぞれの家に帰った。
凛は鮫柄学園の寮の外泊許可を取ってきていて、今日は遙の家に泊まる。
遙の家に泊まるのはこれが初めてではない。
風呂からあがった凛は引き出しの中を見ていた。そこにTシャツがあると遙に言われた場所だ。
「あいっかわらず変なシャツばっかりだな」
そう文句を言いつつ、しかし、おもしろがっている様子でもある。
そんな凛を見て、遙は無表情のまま言う。
「身体が大きくなって、無愛想になっても、おまえが俺にとっては天使であるのは変わりない」
ビシッとした口調だった。
「ああ?」
凛は眉根を寄せて、遙のほうを見る。
「なに妙なこと言ってんだ、おまえは。本当におまえの考えてることは、よくわからねぇよ」
そう言うと、凛はため息をついた。