鈴の音
ユキの肌は滑らかで、白よりも白い。
僕は毛布越しにユキの肩を抱いたまま、長い髪の毛に顔を埋めている。
本当は知っていた。彼女は猫じゃない、人間の女の子だ。人間の女の子には首輪なんて着けないし、部屋から一切出さないというのも間違っている。知っている。だけど、そうしないとまた逃げてしまう。僕の手を離れて、知らないところへ行ってしまう。
「ユキ」
僕は彼女を呼んだ。正しくは、「ユキ」に甘んじている女の子を呼んだ。ユキはもういない。僕から逃げて、二度と帰ってこない。
「どこにも行かないで」
綺麗な長い髪をかき上げて、唇で首筋を撫でた。首の鈴がちり、と鳴る。耳元で、いかないよ、とか細い声がした。
長い、長いキスをした。
互いを貪り合う湿った音も、降る雪に掻き消されているようだった。ユキの猫かぶりも、僕の汚い性根も、白く白く塗り潰されそうだ。
毛布を敷いて、ユキの体を横たえた。ユキは口を真一文字に結んで、潤んだ目で見上げている。
僕らは、思いのまま愛する相手が欲しい。ただシンプルに、体の熱を交わし合う相手が必要なんだ。嘘も裏切りも、全てはそのためにある。
静かな部屋に、今日も鈴の音が響く。