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自虐のすすめ

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私がRRLのスリムブーツカットデニムを愛用しているのは、デニムをファッションアイテムへと確立させたあのラルフローレンが、わざわざ日本の生地を輸入して母国で手づくりするという、日本人として非常に鼻が高いデニムであるという事や、あるいは私のファッションリーダーであるデイビットベッカム氏も愛用しているという事なども確かに理由としてはあるが、最大の理由はそんな事ではなく、私の脚を実際よりも確実に長く見せてくれる形であるから、という事を白状しよう。

そう、私は短足なのである。

成長期に伸びた身長の9割は座高であった。

特に中学3年次の身体測定の時などは甚だしく、前年比で身長が4cm伸びたのに対し、座高は6cm伸びていた。

脚が伸びないどころか縮んだのだ。

短足は完全に私のコンプレックスとなった。

大学3年の時、彼女の家に泊まりに行き、私よりも20cmほど身長が低い彼女が履いてジャストサイズのスウェットを借り、私もほぼジャストサイズなので、股間のシルエットがハッキリとわかってしまいそうなくらいにスウェットをずり上げて履き、

「やっぱりちょっと短いな」

と見栄を張った事は何度もある。

どうせその後すぐに全部脱ぐのだから、今思うと全くもって無意味な見栄っ張りであった。

またゼミの後輩に、

「やっぱり先輩のジーパンの履き方はいつ見てもめっちゃかっこいいっすね。絶妙な腰パンっすよね。」

と言われて胸を痛めたのは記憶に新しい。

腰パンなどしたら確実にドラえもんよりも脚が短く見えてしまうことであろう。

このように、短足であるが故に幾度となく心に傷を負ってきた。

脚が短くて良い事などほとんどないのだ。

強いて言うならば、万歩計をつけて同じ距離を歩き、歩数が多かった方が勝ちというゲームをやる場合に有利である事、あるいは30cm四方のマス目を1マスずつ進まなければならないというルールが設定されているマス目状の道を歩く場合に楽である事、ぐらいである。

このように少なくとも日本では見たことも聞いたこともないような場面でしか、短足には利点がない。

そんな事を思うとコンプレックスはますます深まるばかりである。

どうにか解消できないものかと、3年かけて千思万考した結果、2つの方法を思いついた。

まず1つは、脚長効果の高いアイテムを購入し、身につけるという方法である。

まさに私がRRLのデニムを履くというのがこれにあたる。

しかしこれは一見解決策のようではあるが、一時的なカンフルにすぎず、本質的な解決策にはならないという事が経験によって明らかになった。

2つ目は、実際に脚を長くするという方法である。

これを実現するための具体的な手段は2通り考えられる。

1つは、ピアノを上手く弾くために水かきを切るピアニストをイメージし、脚の始点から上方向に三角形に股を切るという方法がある。

もう 1つは、だるま落としをイメージし、胸部から腹部までのどこかの部位をうまい具合に落とすという方法がある。

いずれの方法でも、身長に対する脚の長さは確実に上がり、コンプレックスは解消されるであろう。

しかしそれぞれ難点もある。

前者の場合、まず間違いなくち○こがなくなってしまう。

それにより、○んこがないという新たなコンプレックスが生まれてしまう可能性がある。

後者の場合、相対的に脚は長くなるものの、同時に身長が低くなってしまい、それが新たなコンプレックスになる可能性も0ではないばかりか、おそらく死んでしまうであろう。

いずれもリスクが大きすぎるので、実行には至らない。

私の3年間は無駄に終わった。

結局のところ、どうする事もできないのだ。

短足の諸君よ、これが現実である。

だからもう諦めて、開き直って、寂滅為楽の境地に立って、コンプレックスを話のネタにしてしまおうではないか。

癒えぬ傷にいつまでも絆創膏を貼っていても仕方あるまい。

だったら風に当ててやろう。

今日の私のように。
作品名:自虐のすすめ 作家名:龍ちゃん