Wish プロローグ4
<1章=プロローグ>
「はぁ…はぁ…。や…やっと撒いた…ぜ」
両足に全精力を総動員させていた俺は、追っ手が来ていないことがわかると、稼動を停止させ、くたんと体を前に、膝には手をと逆Uの字を作っていた。
「ふぅ~。ここまで来れば大丈夫だろう」
風紀委員の魔の手から逃げ切った俺は、いつの間にか虹ヶ坂公園まで来てしまっていた。
あれだけ全力疾走したのはいつだっただろうか?
…って昨日だよ。
かえでの勝手な妄想暴走のおかげであいつを追いかける破目になったんだっけな。
まったく、昨日今日これだけ走ればそろそろ落ち着いた生活が到来しても罰は当たらんだろうに。…まぁそれは今はいいとしてだ。
俺は休めていた体をぐーっと起き上がらせると、大きく1回伸びをして体を解す。
そして、呼吸も体調も落ち着いたところで、抑えていた行き場のなかったある感情を再び蘇らせていた。
「それにしても、凍弥の野郎……」
自分だけ雲隠れしたうえに、俺を助けるどころか風紀委員と一緒になって追いかけやがって……。
いったい、あいつは何なんだ?
まぁ、そんなこと考えるだけ無駄ってもんだな…。だって凍弥だもんな。
「さて、こんなところでまた、風紀委員に見つかってもやっかいだな」
何せ、関係すらない凍弥もなぜかいるわけだし…。
ここは警戒しておくべきだな。
「そんじゃ、警戒しつつ帰るとするか」
今日はいろいろありすぎて疲れたし。早く帰って身体を休めたいぜ。
そう思うと、俺は、公園を出ようと歩き出した。
「ぐすっ…うぅうっ…」
しかし、どこからか女の子の泣き声が聞こえてきた。
公園を後にしようとしていた俺は思わず立ち止まりその声の元がどこなのかぐるりと公園を見渡してみる。
「うぅ…ぐす…」
すると、俺のすぐ近くのベンチで少女が泣いていた。
どうやら見た感じ日本人じゃなさそうだ…。
髪は銀髪だし、目の色も赤いし…って目が赤いのは泣いてるからか?
う~ん…ここは、どうしたのか聞くべきだよな。
それに、このままほって置くことも、俺にはできないし。
「なぁ、どうしたんだ?」
「え?」
俺が少女に話しかけるとびくんとまるで小動物がちょっとの物音で反応を示すかのように微動し、少女はゆっくりと顔を上げ、驚いたようで目を丸くしていた。
って…言葉通じるのか?勢いで話しかけちまったが……。
「あの…君、俺の…というか日本語わかる?」
「は…はい。大丈夫です」
「よかった。それで、どうしたんだ?何か泣いていたみたいだけど」
「あぁ、あはは、お恥ずかしいところを見せてしまいましたね」
少女は、涙を拭きながら照れ笑いする。
「実は、道に迷ってしまいまして…」
「み…道に?」
「はい。ここに来るのは久しぶりで、街の様子もすっかり変わってしまっていて、あの…その…誰かに道を聞こうと思ったのですが…」
「ですが…?」
「話しかける前に恥ずかしくなってしまって聞けなくなってしまいまして…」
「え?」
「あの私、その…小さい頃からお屋敷からあまり出たことがなく、ほとんど人とは接したことがないんです」
「そうなんだ…」
「はい。そうしたら何だか自分が情けなくなってしまいまして…」
「それで、泣いてたのか」
少女の話からするに、彼女は、どこかの良家のお嬢様で、今日も何かの用事でここに来た。しかし、その途中で道に迷い、そのあげく途方に暮れて行き場がなくなってしまい心細くなった彼女は、ようやくたどり着いたこの公園で泣いていた…こんな感じだろう。
「それで、どこに行きたいんだ?」
「え?どうして、そのようなことを聞くのですか?」
少々困惑した表情で答えた。
「いや、このまま君をほって置くこともできないしさ、それに、ここで会ったのも何かの縁だ。一緒に探してやるよ」
「え~!わ…悪いですよぉ!見ず知らずの方にそこまでしていただくなんて…」
少女は、魚のように口をパクパクさせながら、手をぶんぶんと交差させていた。
「でも、君、人見知りなんだろ?このまま帰っても気になっちまうし、それにもうすぐ日が暮れる。夜道を女の子一人でいるのは危ないから…な?」
「………」
少女は、急にぼーっとして、顔をよく見ると、少し赤くなっている。
「ん?どうしたんだ?」
「え?あ…あの…その…すいません。私のことを心配して下さったことが嬉しくて、つい感傷に浸ってしまいました。あはは♪」
少女は、さっきまでの暗い表情とはうってかわって、可愛らしい笑顔を見せた。
この娘、笑うと可愛いなぁ。
「まぁ、そういうことだ。一緒に探そうぜ」
「ええ、じゃ、お願いしますね」
少女は、上品な口調で嬉しそうに微笑んだ。
…さすがお嬢様だな。あいつらとは違って品がある。
例えるなら天と地の差、月とすっぽんって感じだな。…でも、それにしても。
俺はこの上品のお嬢様であると思われるこの少女のこのギャップの違いを思い出すと思わず微笑ましい気持ちになった。
「ハハハ。でも、何か意外だったなぁ」
「え?何がですか?」
「君、人見知りなトコがあるだろ、でも、俺と話している時は普通に話してたなと思ってさ」
「そういえば、そうですね。どうしてでしょうか…不思議ですね」
「まぁ、俺としてはその方が嬉しいんだけどな」
「ふふふ。そうですね。それに、私もあなたが話しかけていただかなかったらずっとこのままでしたし」
少女は、さっきまでのことを思い出したのか、照れ笑いしている。
「そういえば、まだ、私たちお互い自己紹介していませんでしたね」
「言われてみれば、そうだったな」
何かそんな感じしなかったな。
昔から知っている友人…そう、そんな感じがした。
「私は、アミーナ。アミーナ・ノヴァといいます」
「え?……アミーナって、もしかして…お前…ミナか?」
「え!?」
アミーナは、突然、目を丸くして驚いていた。
「俺だよ、雛月春斗」
「雛月…もしかして…ヒナちゃん?……あのヒナちゃん…なの?」
「そうだよ!いや、ホント何年ぶりだ?」
俺の喜びとは裏腹に、ミナは、なぜかうつむいてしまった。
「うぅ…うっ…うぅぅ」
ミナは、目に涙を溜めて、そのうるうるした目で俺を見つめていた。
「お…おい、どうしたんだ?ミナ…」
と言葉を続ける間もなく、俺は、ミナに抱きつかれていた。
「え?」
突然のことに、俺の思考が混乱してしまった。
「ミナ……?」
「うぅ…会いたかったよ…ヒナちゃん…。うぅ…うっ…も…もう、会えないと思ってたんだよ…」
ミナは、ぽろぽろと涙を流しながら力いっぱい抱きついてきた。
まぁ無理もないか、あれから結構な年月が経ってるからな。
「あぁ、俺もだ。しかし、何だって急にこっちに戻ってきたんだ?あれから全然、連絡なかったし、あの時だって急に引越しちまうし、心配してたんだぞ」
「ごめんね…ヒナちゃん。あの時は…しょうがなかったの。で…でも、今度は急にいなくなったりしないから…だから!」
ミナは、必死にわかってもらおうと真剣な眼差しでじっと俺を見つめた。
「あぁ、わかってるよ。だから、もう泣くな」
「はぁ…はぁ…。や…やっと撒いた…ぜ」
両足に全精力を総動員させていた俺は、追っ手が来ていないことがわかると、稼動を停止させ、くたんと体を前に、膝には手をと逆Uの字を作っていた。
「ふぅ~。ここまで来れば大丈夫だろう」
風紀委員の魔の手から逃げ切った俺は、いつの間にか虹ヶ坂公園まで来てしまっていた。
あれだけ全力疾走したのはいつだっただろうか?
…って昨日だよ。
かえでの勝手な妄想暴走のおかげであいつを追いかける破目になったんだっけな。
まったく、昨日今日これだけ走ればそろそろ落ち着いた生活が到来しても罰は当たらんだろうに。…まぁそれは今はいいとしてだ。
俺は休めていた体をぐーっと起き上がらせると、大きく1回伸びをして体を解す。
そして、呼吸も体調も落ち着いたところで、抑えていた行き場のなかったある感情を再び蘇らせていた。
「それにしても、凍弥の野郎……」
自分だけ雲隠れしたうえに、俺を助けるどころか風紀委員と一緒になって追いかけやがって……。
いったい、あいつは何なんだ?
まぁ、そんなこと考えるだけ無駄ってもんだな…。だって凍弥だもんな。
「さて、こんなところでまた、風紀委員に見つかってもやっかいだな」
何せ、関係すらない凍弥もなぜかいるわけだし…。
ここは警戒しておくべきだな。
「そんじゃ、警戒しつつ帰るとするか」
今日はいろいろありすぎて疲れたし。早く帰って身体を休めたいぜ。
そう思うと、俺は、公園を出ようと歩き出した。
「ぐすっ…うぅうっ…」
しかし、どこからか女の子の泣き声が聞こえてきた。
公園を後にしようとしていた俺は思わず立ち止まりその声の元がどこなのかぐるりと公園を見渡してみる。
「うぅ…ぐす…」
すると、俺のすぐ近くのベンチで少女が泣いていた。
どうやら見た感じ日本人じゃなさそうだ…。
髪は銀髪だし、目の色も赤いし…って目が赤いのは泣いてるからか?
う~ん…ここは、どうしたのか聞くべきだよな。
それに、このままほって置くことも、俺にはできないし。
「なぁ、どうしたんだ?」
「え?」
俺が少女に話しかけるとびくんとまるで小動物がちょっとの物音で反応を示すかのように微動し、少女はゆっくりと顔を上げ、驚いたようで目を丸くしていた。
って…言葉通じるのか?勢いで話しかけちまったが……。
「あの…君、俺の…というか日本語わかる?」
「は…はい。大丈夫です」
「よかった。それで、どうしたんだ?何か泣いていたみたいだけど」
「あぁ、あはは、お恥ずかしいところを見せてしまいましたね」
少女は、涙を拭きながら照れ笑いする。
「実は、道に迷ってしまいまして…」
「み…道に?」
「はい。ここに来るのは久しぶりで、街の様子もすっかり変わってしまっていて、あの…その…誰かに道を聞こうと思ったのですが…」
「ですが…?」
「話しかける前に恥ずかしくなってしまって聞けなくなってしまいまして…」
「え?」
「あの私、その…小さい頃からお屋敷からあまり出たことがなく、ほとんど人とは接したことがないんです」
「そうなんだ…」
「はい。そうしたら何だか自分が情けなくなってしまいまして…」
「それで、泣いてたのか」
少女の話からするに、彼女は、どこかの良家のお嬢様で、今日も何かの用事でここに来た。しかし、その途中で道に迷い、そのあげく途方に暮れて行き場がなくなってしまい心細くなった彼女は、ようやくたどり着いたこの公園で泣いていた…こんな感じだろう。
「それで、どこに行きたいんだ?」
「え?どうして、そのようなことを聞くのですか?」
少々困惑した表情で答えた。
「いや、このまま君をほって置くこともできないしさ、それに、ここで会ったのも何かの縁だ。一緒に探してやるよ」
「え~!わ…悪いですよぉ!見ず知らずの方にそこまでしていただくなんて…」
少女は、魚のように口をパクパクさせながら、手をぶんぶんと交差させていた。
「でも、君、人見知りなんだろ?このまま帰っても気になっちまうし、それにもうすぐ日が暮れる。夜道を女の子一人でいるのは危ないから…な?」
「………」
少女は、急にぼーっとして、顔をよく見ると、少し赤くなっている。
「ん?どうしたんだ?」
「え?あ…あの…その…すいません。私のことを心配して下さったことが嬉しくて、つい感傷に浸ってしまいました。あはは♪」
少女は、さっきまでの暗い表情とはうってかわって、可愛らしい笑顔を見せた。
この娘、笑うと可愛いなぁ。
「まぁ、そういうことだ。一緒に探そうぜ」
「ええ、じゃ、お願いしますね」
少女は、上品な口調で嬉しそうに微笑んだ。
…さすがお嬢様だな。あいつらとは違って品がある。
例えるなら天と地の差、月とすっぽんって感じだな。…でも、それにしても。
俺はこの上品のお嬢様であると思われるこの少女のこのギャップの違いを思い出すと思わず微笑ましい気持ちになった。
「ハハハ。でも、何か意外だったなぁ」
「え?何がですか?」
「君、人見知りなトコがあるだろ、でも、俺と話している時は普通に話してたなと思ってさ」
「そういえば、そうですね。どうしてでしょうか…不思議ですね」
「まぁ、俺としてはその方が嬉しいんだけどな」
「ふふふ。そうですね。それに、私もあなたが話しかけていただかなかったらずっとこのままでしたし」
少女は、さっきまでのことを思い出したのか、照れ笑いしている。
「そういえば、まだ、私たちお互い自己紹介していませんでしたね」
「言われてみれば、そうだったな」
何かそんな感じしなかったな。
昔から知っている友人…そう、そんな感じがした。
「私は、アミーナ。アミーナ・ノヴァといいます」
「え?……アミーナって、もしかして…お前…ミナか?」
「え!?」
アミーナは、突然、目を丸くして驚いていた。
「俺だよ、雛月春斗」
「雛月…もしかして…ヒナちゃん?……あのヒナちゃん…なの?」
「そうだよ!いや、ホント何年ぶりだ?」
俺の喜びとは裏腹に、ミナは、なぜかうつむいてしまった。
「うぅ…うっ…うぅぅ」
ミナは、目に涙を溜めて、そのうるうるした目で俺を見つめていた。
「お…おい、どうしたんだ?ミナ…」
と言葉を続ける間もなく、俺は、ミナに抱きつかれていた。
「え?」
突然のことに、俺の思考が混乱してしまった。
「ミナ……?」
「うぅ…会いたかったよ…ヒナちゃん…。うぅ…うっ…も…もう、会えないと思ってたんだよ…」
ミナは、ぽろぽろと涙を流しながら力いっぱい抱きついてきた。
まぁ無理もないか、あれから結構な年月が経ってるからな。
「あぁ、俺もだ。しかし、何だって急にこっちに戻ってきたんだ?あれから全然、連絡なかったし、あの時だって急に引越しちまうし、心配してたんだぞ」
「ごめんね…ヒナちゃん。あの時は…しょうがなかったの。で…でも、今度は急にいなくなったりしないから…だから!」
ミナは、必死にわかってもらおうと真剣な眼差しでじっと俺を見つめた。
「あぁ、わかってるよ。だから、もう泣くな」
作品名:Wish プロローグ4 作家名:秋月かのん