終わらないうた
雨の日の古本屋
急に降り出した雨
足早に帰りを急ぐ人混みの中
褪せた街角から聞こえてくるメロディー
‘いつからだってやり直せる
空に向かって羽ばたこう…’
だってさ
ずっと探してる本が今日は見つかるかな
強まる雨の中期待しながら古本屋に向かった
結局みつからなかったな
ぶらぶらと立ち読みでもしてこう
小説か雑誌
歴史もの…
どれにしよう
これは?どれどれ…
主人公がただ泣いてるだけの話?うーん…こんな話しだれか読むのかな
店からさっきと同じメロディーが聞こえる
泣き 笑いしながら
それでもなんとか道を歩く人々を鼓舞する挿入歌が聞こえる
その時 言葉が浮かんだ
「本屋で立ち読みしている男の耳にさっきと同じ流行りの歌が聞こえてきた」って本の一行みたいなのが浮かんだんだよ
君は主人公なんてありきたりで古くさいけどちょっと面白い
泣き 笑いしながら
精一杯生きよう
だけど壊れるほど
そんなに考えすぎることないよそんなに苦しむことないよ
苦しくなったら
本の表紙をパタンと閉めてしまえばいい
だってそれは本の中
僕が読んでる主人公
暖かな部屋でくつろぐ僕に帰ろう
少し休んだら
またページを捲ろう
次のページは真っ白
いつだって僕たちは 書きながら読んでいるんだ
後から読み返したら素敵に思えるように書いて読んでいくんだよ
あらかじめずっと先のことまで書かれた壮大な台本を完璧にこなせたことだけを幸福とは言わないはずだ
本屋を後にして僕はコーヒーショップへ向かった
雨はもう止んでいて灰色の雲をかき分けたように透き通る青空が顔を出していた
そうだ
あの娘にメールしてみようかな
作品名:終わらないうた 作家名:BhakticKarna