終わらないうた
抱き締めあって笑った
私に触れないで下さい
柔くて剥き出しているから
少しの風にさえ
滲みて痛むから
怖いから触れないで下さい
僕に触れないで下さい
一度壊れてしまったから
一生懸命繋ぎ合わせて組み立てたけど
すぐにまた壊れそうだから
触れないで下さい
あたしに触れないで下さい
穴が開いてて
前に傷ついたとこが痛むから
あたしに触れないで下さい
誰も俺に触れられない
俺は分厚い鉄壁で守られているから
触れようとしてくる奴がいたら打ちのめしてやる
誰にも決して触れさせない
剥き出しの柔いところに優しくベールをかけようとする者は逃 げられ傷つき
継ぎ接ぎを留めて直そうとした者は誤って崩してしまい傷ついた
穴から手を伸ばして絆創膏を貼ろうとしたものはあまりに大きな傷口に恐れ傷つき
鉄壁を越え愛を届けようとした者は打ち返されあまりにも分厚い壁に諦め傷ついた
抱きしめてほしいのに傷つくことを怖がり
触れてほしいのに壊れるのを恐れ
癒やしてほしいのに隠れ怯え
愛を欲しながら自ら作った壁に阻まれた
みんなびくびくと怯え
守るのに疲れきっていた
傷つけられる前に逃げるので一人になった
必死になにかを大事に守っている
そんなに守るのが難しいなら
どこかへやってしまえたらいいのに
最初からそんなものなかったと思えたらいいのに
いつまでこうしているの
いつまで
壁の先へ手を伸ばし叫ぼう
気付いた者から一生懸命守ってたやっかいなものを手放した
みんな守るものがなくなって
傷つけられるものがなくなったらびくびくしなくてよくなった
変わりに誰かを守りたいと思った
ベールが暖かく包み込み
残った継ぎ接ぎの欠片の隙間からは
暖かい波が沢山染み込んできた
鉄壁もいらなくなった
爽やかな風が吹き込み
輝く光が差し込んだ
ベールをかけようとした者も
継ぎ接ぎを留めようとした者も絆創膏を貼ろうとした者も
壁を乗り越えようとした者も
自分の中の守るものがなくなったら傷つくことがなくなった
ただ思いやる気持ちだけが残った
そしてみんなは
思いやる気持ちを受け取って
抱きしめあって笑った
作品名:終わらないうた 作家名:BhakticKarna