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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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霧子

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少しでもいいから酒が呑めたらと思う

あるいは煙草でもいいかもしれない

煙をくゆらせながら

グラスを片手に持ち

霧子のワイングラスに当てながら

「送るからゆっくりして行こう」

気障な言葉を言ってみたい

霧子は黙っているだろう


今夜は雪の夜

どこかの店に入りたいが

やはり喫茶店

霧子の肩に手をかける事さえ

ためらいながら

コーヒーカップで手を暖める

いい年をして

傍から見ればそうだろうけれど


いつものように

霧子と別れてしまった道に

足跡がが残っている

いずれは消えてしまうけれど

雪が降ってくれたから

霧子と歩いた道を

記憶に残せる


霧子は別れ際に

小さな雪だるまを作って

道端に置いた

ミルクの容器が頭に載っている

「手が冷たい」

霧子は僕の手を握り締めた


霧子の身体が僕の体に

密着したような暖かさを

その時僕は感じていた

雪の夜だから

尚更霧子を感じた

霧子も僕を感じてくれたらいいなと

小さな雪だるまを見つめた










作品名:霧子 作家名:吉葉ひろし