ミステリー短編集 百目鬼 学( どうめき がく )
これは指摘通り、まことに盲点だ。芹凛は今までの捜査記録を繰り直し、必死に考えた。そして、やっと結論を得た。
「カナカは京田龍介と愛人との間に出来た娘では?」と。
きっとこれは正解だろう。そのためか、鬼の百目鬼刑事が間髪入れずに、「今は一郎も次?もいない。だから次期社長は――、カナカだ!」と言い切った。
これを受け、「カナカは直接的に人を殺してないわ。これからはすべての罪を斉藤に被せるつもりなのね、最初からカナカの謀略なのよ」と芹凛が女鬼の目を鋭く光らせる。
「それが一族というものだ、確かに骨肉の争いはある。だが最後の最後には、たとえ後継者が愛人の娘であっても、血によって守られるということだよ」
こう吐き捨てた百目鬼、「今回の仮説は……、血族外の斉藤常務にとって、自分を慕ってくれたスパイのカナカ、実はおぞましい魔物だった、ってことだよ。さっ、芹凛、それを暴きに行くぞ!」と不敵な笑みを浮かべるのだった。
作品名:ミステリー短編集 百目鬼 学( どうめき がく ) 作家名:鮎風 遊