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ミステリー短編集  百目鬼 学( どうめき がく )

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 尖った白波のてっぺんを粉雪が驚きの速さでかすめていく。
 そんな冬の到来を充分知覚させてくれるある日、1立方メートルの木箱が浜に打ち上げられた。
 きっと荒波に揺さぶられた船から落下し、その後漂流してきた積み荷に違いない。途中岩に叩かれたのだろう、ぽっかりと穴が開いている。
 高波を求めて遊びに来たサーファーが中を覗くと、激切に白い生物、いや白面の人間がカッと瞳孔を開いていた。
 結果、百目鬼刑事と部下の芹凛(せりりん)こと芹川凛子刑事は急遽現場へと駆け付けることとなった。

 まず二人は青シート上の遺体に手を合わせる。
 その後雪混じりの北風に百目鬼はすり切れたコートの襟を立て、芹凛は顔にマフラーを巻き付け、あとは黙りこくったまま現場検証に入る。身体は芯まで冷えたが、貪欲に作業を遂行し、そして署へと引き上げた。