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ミステリー短編集  百目鬼 学( どうめき がく )

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 相場師・燻屋銀次郎には法定相続人がいない。
 しかし長年連れ添ったバツイチの内縁の妻、良子がいる。
 そして良子には別れた前の夫との間に、離婚時に手放した、それは捨てたも同然の息子の光司がいる。この光司が最近株にのめり込み、大損したという。

 その穴埋めにと光司が考え付いたのが、株資産を持つ銀次郎の殺害。
 銀次郎が死ねば、遺産は内縁の妻であっても、良子に相続される。
 そして、たとえ光司が銀次郎とは他人の父の姓であるとしても、良子の実子である以上、最終的に母の死亡によりその遺産は光司の手に渡ることになる。

 母を奪った燻屋への復讐も込め、この筋書きで、光司は母が今まで世話になってきたので礼をしたいと銀次郎を呼び出し、殺害した。

 こう結論付けした芹凛に百目鬼は深く頷き、あとは沈黙したまま天井を眺めている。
「大丈夫ですか」と気遣う芹凛に、百目鬼はギョロッと鬼の眼を剥き吠えるのだった。

「光司には金も時間もない。芹凛の推理が正しければ、次の光司の大博打は実母殺害ってことか。確かに臭う。まだ銀次郎殺人の証拠は不充分だが、芹凛、次の不幸が起こる前に、別件逮捕でとにかく光司の身柄を確保しておこう。これが女鬼刑事と鬼デカ・百目鬼のギャンブルだ!」