アリとキリギリスと人間
それを踏まえての物語である。
少し肌寒くなり葉が色づいてきた秋の森で事件は起こった。
アリたちがせっせと蓄えていた食料を怠け者のキリギリスが盗んだのである。
アリたちはハァ…。っとため息をついた。
その様子をとある人間の新聞記者が見ていた。
「あぁ…。なんて可哀想なアリたちだ。よし!これで記事を書こう!あのキリギリスは農作物を荒らしたりと前から気に入らなかったんだ!あの犯罪者め、徹底的に叩いてやるぞ!他の新聞記者やTV局、週刊誌の奴らにもこの事件を教えよう!」
そして、次の日。
話を聞きつけた大勢のマスコミたちが駆け足でアリたちの元へと訪れた。
「盗まれた食料はどのような物でしたか!?」「アリさん!今のご心境は!?」「心中お察しいたします!」「キリギリスについてどう思いますか!?」
大量の声と大量のシャッター音が静かな森の中で響く。
アリは答えた。
「…。キリギリスが盗んだ量は大した事はありません。食料はまた集めれば済むことです。」
「さすがアリさん!心がお広い!あなたたちの怒りをぜひ記事にしますね!」
「それは、ありがたい。今、あなたたちがやって来たせいで仲間を何百匹と踏んで殺したのはご存知ですか?食料を盗まれた事よりもそちらの方を記事にしていただきたい。」
マスコミたちが足元を見るとアリたちが潰れていた。
マスコミたちは黙り、すぐに帰ってしまった。
この事が記事やTVで報道される事はなかった。
END
作品名:アリとキリギリスと人間 作家名:ルーツ