夢と少女と旅日記 第5話-3
いやー、それにしても、本日はお日柄もよく実に清々しい! 皆さんもこんな陰気臭いところでカビを生やしている場合じゃありません! 外で元気に遊びましょう! はい、ここ笑うところですよー!」
やたらテンションが高いですが、なんなんでしょう。ともかく気持ちの悪い男が気持ちの悪い声で気持ちの悪い演説を始めました。一言で言うと、キモいです。
大げさな身振り手振りで、なんだか自分に酔っているかのようにも見えました。ですが、このときの私はまだ大人しく話を聞いていようという気持ちでした。
「さて、皆さん、ここにお集まりいただいたということは、夢の世界へと入る手段を持つ有資格者なのですね! いえいえ、証明は不要です。何故なら、我々はあなた方を雇うわけではないからです!
どういうことかと首を傾げられた方もおりますね。では、早速ですが、我々から提案させていただくギブ&テイクなシステムについて説明させていただきましょう! と言っても、実にシンプルです!
我々はあなた方にエターナルドリーマーの情報を売る! あなた方はそれを買う! ただそれだけでございます! 一度売った情報は決して他の方には売りません!」
そこで、一人の男が右手を自分の顔の高さまで挙げて言いました。
「待て。いくらお前たちが他に情報を渡さないと言っても、別の筋から情報を得た者に横取りされる可能性はあるだろう。その場合はどうするつもりだ?」
「別に何も致しません。繰り返しますが、我々はただ情報を売るだけです。ただし、その代わりと言ってはなんですが、情報を買っていただけた方には、それを証明するための証明書をお渡し致しましょう」
「なるほどな、そういうことか」
男は納得したようですが、すぐにまた別の男が声を上げました。
「情報の値段は?」
「情報の浸透度によって多少左右されますが、1000〜5000G程で考えております。決して法外とは言えない金額かと」
「ミッションの難度についても考慮してもらわないと困るな」
「いえいえ、もちろん分かっていますとも。夢魔の強さはまちまちだということも。ですが、そもそもこれはミッションではないのです。ここまで言えば、聡明な方なら理解していただけると思いますが?」
レガールのその一言で、男は黙ってしまいましたが、そのあともいろんな人がレガールに質問を投げかけました。そして、質問に対する答えがあると、その誰もが納得せざるを得ないようでした。
しかし、それにしてもなんなんでしょう、この人たちは。誰もがみな、エターナルドリーマーからお金を取る前提で話をしているように思いました。
ナイトメアを倒そうとする人はひとりもいないのかと、私が思いかけたとき、彼女が机を叩き、不快感をあらわにして立ち上がりました。
「失礼致しますわ。わたくし、ちょっと気分が悪いので、外で空気を吸って参りますわ。お金の話が好きな方々は、わたくしのことなど気にせず、ここに残って議論を続けてくださいまし」
作品名:夢と少女と旅日記 第5話-3 作家名:タチバナ