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アナザーワールドへようこそっ!  第二章  【024】

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  【024】



 シーナは隼人を残して一人、『教育棟』……『本館』へと向かっていた。



「あのバカ……リサに抱きつかれたくらいでデレッとしおって。先が思いやられるぞ…………まったく」

 と、ブツブツと隼人の文句をつぶやきながら、本館の建物まで行くと、


「あ、シーナーーっ!」


 聞き覚えのある声……。

「アイリッ!」

 アイリは三階の窓から顔を出してシーナに手を振っていた。

「シーナ、早くおいでよっ! Aクラスは三階のここだよ~っ!」
「えっ? てことはアイリ……、あなたもAクラスなのっ?!」
「もちっ! 言ったでしょ~、わたしは『特別招待生に近い女』なんだってっ!」
「ふふ……そうだったわねっ!」
「理事長室での話、終わったの~?」
「うん、終わったー」
「ねえ、ねえ、さっき、職員棟で騒ぎがあったって聞いたけど何かあったの?」
「え~? 知らな~い」


「ウソ、おっしゃいっ!」


 すると、突然、アイリを押しのけて、横からフレンダ・ミラージュが顔を出して叫んだ。

「う、うわっ! フ・フレンダさんっ……!」

 これには、さすがのシーナもビックリした。

「シーナ様? 何を、しらばっくれてるのかしら? わたしには、すでに先ほどの『職員棟での事件』は耳に入ってますのよ?」

 ギクッ。

 シーナはフレンダ・ミラージュのことが苦手だった。

「はは……そ、そうなんですか?」
「ええ、そうよ。さっきの、あの『職員棟での事件』……『職員棟浮遊事件』の情報はすべて握っていますのよっ!」

 フレンダは誇らしげに言い放った。

「何、何? その『職員棟浮遊事件』って……?」

 すると、横からアイリが出てきて、フレンダに質問する。

「あっ! あなた、入学式の…………確か、アイリさん?」
「あ、そうそう。へー名前覚えててくれたんだ~」
「覚えるも何も、私は一度聞いた名前を忘れるような礼儀知らずな教育は受けておりませんっ!」

 と、フレンダはまたまた誇らしげに言い放った。

「ふーん、そっか……すごいんだね、フレンダって。それに……思ってたよりもすごく…………やさしい人なんだね」
「な、何ですか? あ、あなた、いきなりっ………?!」
「フレンダさん、今日からお友達だよっ!」
「な、何を言ってるの、あなた? わ、わたしは、あなたのような田舎者とは友達になんて、な、なりたくありませんわっ!」

 と、少し頬を染めながらフレンダはアイリを突き放した。

「ふふ……フレンダ、かわいい」
「な、な、なな…………っ!?」

 シーナ置いてけぼりのまま、アイリとフレンダは窓際で会話を弾ませていた。

「あ、ごめん、シーナッ! とりあえず早くクラスに来なよ、フレンダと待ってるからーっ!」
「う、うん。わ、わかったっ!」
「あ、あなた、さっきから何々ですの……馴れ馴れしい。しかも、『特別招待生』のあのお二人にどうして敬語を使わないの? 失礼ですよ」
「まあ、まあ…………二人に敬語を使わないのはシーナにそう命令されたからだよ!」
「うそおっしゃい……」
「本当だよっ! ねっ? シーナ?」
「あ、う、うん」
「でしょー?」
「あ、フレンダさんも敬語ではなくて、普通にシーナで呼んで下さい、め、命令ですっ!」

 と、シーナは空気を読んでフレンダにもそう命令した。

「いいのですか? シーナ様?」
「ええ、構いません。他の教室にいる人たちにもそう伝えてください」
「は、はい、わかりました。みなさーん、聞いてください、これから…………」
「みんな、みんなー、特別招待生のシーナがねー……」

 フレンダはシーナに言われた通り、素直に教室のみんなにも敬語はやめるよう言った。あと、アイリもフレンダと一緒にみんなに伝えていた。

 どうやらフレンダとアイリが友達になったようだ。

 まーでも、そんなことはどうでもいいのだけれど。


「あっ! おーい、ハヤトーッ!」


 アイリは、シーナの少し後ろからついてきた隼人をみつけ、声をかける。

「……んっ? アイリ?」

 シーナに追いついた隼人は、シーナに問いかけた。

「どうやらアイリもAクラスみたいなの……」
「へー、あ、そう……」


「シーナ様! わたくしもいるのを忘れずにっ!」


 すると、アイリの横にいるフレンダが、そうシーナに叫んだ。

「う、うわっ!?」

 隼人はいきなり出てきたフレンダ・ミラージュに驚いた。

「お、おい……シーナ、あれってまさか、入学式の……」
「はい、フレンダ・ミラージュさんです。今、アイリのお友達になったようです」
「はっ……?」
「そうだよー、ハヤトーッ! フレンダは今日から友達だよー」
「あ、あなた、何を勝手に決めてるのっ?! まったく、さっきから……」
「ハヤトー、シーナー……教室で待ってるから早く来なよー」

「「わ、わかったー」」

 俺とシーナはアイリとの会話を終え、『教育棟』……『本館』に足を踏み入れた。



『教育棟』……通称、『本館』。

 ここは生徒が魔法を学ぶ建物…………なのだが、それだけではなかった。


「す、すごーい……」
「な、何だよ、コレ……」


 俺とシーナは建物に入るやいなや、唖然とした。

 この『本館』……建物の中に入ると、まるで地球で言うところのショッピングセンターのように吹き抜けの屋根で広々としており、また、この一階は、教室があるのではなく、いろんなお店が軒を連ねていた。

 まさに、ショッピングセンターのようだった。

「ね、ねえ、お兄ちゃん……ここって、学校(アカデミー)だよね?」
「ま、まあ、そうだと思うけど…………違ったかな?」

 まぎれもなく学校(アカデミー)の中であった。


「おーい、シーナ、ハヤトーッ!」


 アイリが二人の名前を呼びながら、階段を下りてきた。

「へへへ、あのまま教室ではちょっと待てなくってさ……来ちゃった」
「? どういう……こと?」
「さっき、二人の名前を出して『敬語は使わないでねー』って言ってたら、いろいろ二人についての質問攻めに会いまして…………それで逃げてきちゃった、テヘッ!」

 アイリは、シーナとハヤトが来る前に、すでに教室の中を暖めていたようでした。

 さすが、ウチのトラブルメーカーである。

「そ、それにしてもすごいでしょ? ここ?」
「う、うん。そうだね、一階なんて、学校じゃないみたい……」
「ああ、本当だよ。しかも建物の中もすごく立派な作りしてるから……何だか学校にいるなんて感覚じゃないよな」
「でしょー? あ、そろそろHR(ホームルーム)が始まるから、行こっ?!」


 と、アイリに連れられて俺とシーナは『暖まった教室』へと向かって行った。