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ガガーリン
ガガーリン
novelistID. 50570
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肩書

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私のこの世での肩書は精神障害者3級です。この肩書のため、私は女性にすら相手にされません。このことを知っている人は、主に病院関係者ですが、病院のデイケアにいても、まるで、そこがとりあえずの仮の居場所で、体はデイケアにあっても、心は別のところにいつも、置いていなければならない状態です。どうでしょ。果たして、この精神障碍者3
級という肩書は、果たして私の生まれてから今までの私の人生を表していることになるのでしょうか。人は相手を、肩書で見るのが、どうやらこの世の慣わしのようです。私はキリスト教徒なのですが、教会においても、平等とはいいにくく、やはりこの世の肩書というものが、ものをいうようです。おかげで私の不名誉な肩書を、耳にした人は、一瞬のうちに、顔に「もうこれっきりね」という表情をあらわにするのです。私はこの不名誉な肩書を果たして、自ら選び取ったとお思いですか。自ら望んで精神障碍者になったとお思いでしょうか。肩書というものを、自ら望んで、また望んだとおりの肩書を持つことができれば、それは大変幸福なことでしょう。しかし私は、不幸にもこの肩書は、今は頂いております。もう一生この肩書を背負っていくのでしょう。私がこの肩書に満足しているとお思いですか。私の悔しさが、どれほどのものか。もちろんこの肩書のおかげで、私は労働することをまのがれているのです。これを聞いて羨ましいという人もいるかもしれません。でも、ところがですよ。精神障碍者に与えられる仕事というのは、肉体労働、単純作業、いわゆる誰もが、とくに若い人が一番厭う、3Kの仕事なんですよ。こんな仕事をすれば、たちまち病状なんかは悪化していくんですよ。私はどうやら社会の歯車になることに、向いていないたちのようなんです。どうやら歯車を合わそうとしても、とたんに体の具合なんかが、おかしくなってしまって寝込むことになってしまう。だから、私の居場所がなく、私は社会から封殺されそうになっているのです。私の目の前は真っ暗なんです。希望なんてもつなんて、あなた光が見えてこそ、希望に向かうことができるんですよ。しかし一体この希望というものとはなんでしょうか。やっぱり拝金主義の日本という国だったらやっぱり、お金、不動産、地位、名誉なんかでしょうかね。でもこんなもの所詮偶像でしかない。そんなもの求めれば求めるほど、実は遠のいていっちゃうように、私なんかは思ってしまうんですよ。私の目の前は真っ暗なんです。希望というものは、異性との劇的な出会いなんて思ってしまって、それで私は幻滅したこともあります。それでも、私はそこから立ち上がるしかなかった。そして今は暗闇の中にいます。その暗闇の中を、光の全く、見えない暗闇の中を、私は小舟にのってゆっくりと漕ぎ出そうとしているんです。だって今いるところは草一本生えていない不毛の砂漠なんですよ。だから私はとにかく、どんなに荒れ狂う嵐が待ち受けていても私は決死の覚悟でたった一つ与えられた舟と櫂で、暗闇の中をゆっくりと漕ぎ出すんです。
作品名:肩書 作家名:ガガーリン