君のいる場所~第二章~【番外編】
私は、いつから彼に惹かれていったのだろうか。
いつからか、頭に浮かぶのは彼の顔ばかり。
彼が近くにいるだけで、私はとても幸せだった。
だけどしばらくして、シガン王国の人たちが彼を連れ去りに来た。
それを目撃した私は、彼の身代わりになって、囚われの身となった。
それからの生活は、地獄のそれとなんら変わりはないだろう。
毎日のように重労働をさせられ、牢屋に入れられては暴行。
他にも、たくさんひどいことをされてきた。
その頃の私は、もう感情など存在していない。
ただひとつ、思っていたことがある。
この場にいるのが、私でよかった、と。
大好きな彼が苦しむ姿など、見たくはない。
きっと今以上に、心が傷ついてしまうだろう。
そう思ったら、心のそこから、自分でよかったと、思った。
そんな地獄の生活が五年間続いた。
だけどその五年間、彼の顔を思い出すだけで耐えることが出来た。
彼の優しい笑顔、それを、もう一度見たい。
でも…きっと私は死んでしまうだろう。
彼の、両親のように、あいつに殺されてしまうのではないか。
そんな恐怖心が私を包んだ。
絶望のふちに立たされているとき、わずかな光が、私の目に入った。
それはとても小さな光で、瞬きをするだけで見失ってしまいそうだった。
だけど確かに、その光は存在する。
私はその光に必死に手を伸ばし、やっと、掴むことが出来た。
光を抜けると、目の前に立っていたのは、優しく微笑む彼の姿だった。
五年経って、迎えに来てくれた。
優しく私を、抱きしめてくれた。
幸せと日常を、取り戻してくれた。
まだ、想いを伝えることは出来ないけれど、いつか、伝えたい。
私を助けてくれてありがとうって言いたい。
大好きだと伝えたい。
言いたいことがたくさんある。
それがいつか言えるように、私は彼のそばにずっといたい。
彼を支えていこうと、決めたんだ。
今度は私が、彼を救う番…。
作品名:君のいる場所~第二章~【番外編】 作家名:まおな