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君のいる場所~第二章~【五話】

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【五話】


広間_


今まさに、フランがダージスに切りかかろうとしているとき。

「ダージス様!」

勢いよく扉を開き、入って来たのは血相を変えたルイだった。
それに流石にフランも驚き、動きを止める。

「ダージス様から離れてください!」

ルイはダージスの前に立つと、いつも持ち歩いている折り畳み式のナイフを構えた。
フランは少し距離を取るが、まだナイフを構えている。

「ルイ、危険だ、そこからどきなさい」

ダージスにそう言われるが、ルイはどこうとはしない。

「ルイ!」
「僕の役目は貴方様をお守りすることです、この命に代えても…!」

ルイの怒りのこもった声が広間に響く。
その迫力に思わず一歩退くフラン。
だが顔には、マリナと同じような笑みが張り付いていた。

「そうだ、私が欲しかったのはルイの力だよ…さぁ、今からでもいい、こっちに来い。私ならお前をうまく使える、もっと強くしてあげられるぞ」

フランは両腕を広げる。
その隣ではサキが愛おしそうにルイを見つめている。
ルイは二人を睨み、低く迫力のある声色で言葉を紡ぐ。

「大体の話はマリナ様から聞きました、エミリアさんのことも、僕たちの両親のことも全て…。だから、僕は貴方たちの所へは行きません。必ず全員助けてこの城から出ます!」

その言葉を聞いたとき、フランとサキは顔から笑顔を消した。

「そうか…ならば、殺してしまおう」



廊下_


ルイが広間へ向かった直後、マリナは後ろに隠していたナイフを取り出した。

「私たちの狙いは、ジル王国を滅ぼすこと。だからあの国王とその血筋が邪魔だったの。でも安心して、私はカナデ様が好きだから、殺したりなんかしない。私と結婚を約束してくださったら、命を助けて差し上げます。さぁ、どうします?」

緊張感が周りに漂う。
だが最初から、カナデの答えは決まっていた。

「断る、誰がお前みたいな奴と結婚するか!」

そう言われ、マリナは笑顔を消し、二人を睨みつける。

「…ではその身体、永遠に私のものにするしかありませんね」

そう呟いたかと思うと、マリナは勢いよく駆け出しカナデに刃を向けた。
アリサは素早く反応し、マリナに立ち向かう。
マリナはアリサをそのまま突き刺そうとした、が…。
日々の訓練により、実践こそ少ないが経験を積んでいるため、素人のマリナを難なく止めることが出来た。
それは一瞬の出来事で、カナデの目には何が起こったかは分からなかった。


広間_


それと同時刻、広間でも同じような光景が広がっていた。
フランの身体が宙に浮き、床に落ちる。
衝撃と痛みが、後からフランを襲った。

「あなた!」

サキはフランに駆け寄り抱き起こす。
ルイは二人を見下ろし、静かに言葉を投げかける。

「貴方が、僕に勝てるはずありませんよ」

手に持っていたナイフを器用にしまい、ダージスに声をかけた。

「ダージス様、お怪我はありませんか?」
「あぁ、問題ない」
「よかった…。では、サキ様」

ルイに名前を呼ばれ、びくっと肩を震わせるサキ。
恐る恐る、ルイを見上げる。

「何、かしら」

怯えた表情で聞くサキに、ルイは優しく微笑んで見せた。

「エミリアさんの居場所を、教えてください」