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君のいる場所~第二章~【四話】

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【四話】


広間_


廊下でのやり取りとの同時刻。

「今、何と言った…?」

ダージスは、フランの言ったことに驚きを隠せずにいた。
ダージスの目の前では、フランとサキが怪しい笑みを浮かべている。

「あぁ、何度でも聞かせてやろう」

そう呟くと、フランは懐からナイフを取り出した。

「ルイとアリサの両親を殺したのは、私だ」


廊下_


「一体、どういうことですか、マリナ様…」

正気を取り戻し、冷静に問うルイ。
目の前のマリナは口元を緩め真っ直ぐルイを見据える。

「私はまだ幼かったから、お父様から聞いた話だけど、うちの国は、頭脳を必要としていた。シガン王国にはそんな天才はいないのに対し、ジル王国は優れた人間が極めて多い。お父様は、それがほしくて仕方なかったのよ。だから、ジル王国にスパイを送り、その中でも頭脳、戦闘能力が最も高い者を誘拐することに決めた。その能力が最も優れていたのは、ルイだったんだよ」

ルイは、マリナの話を聞きながら五年前のことを思い出していた。
その当時のルイはまだ十一歳。
アリサが生まれて一年が経った頃だろうか。
だが何故か、昔のことをなかなか思い出すことが出来ない。
ルイは必死に思い出そうとするが、その度に頭がズキズキと痛む。
そんなことには構わず、マリナは話を続ける。

「それで、シガン王国は、ルイの誘拐を企てた。だけど…その作戦にいち早く気付いたのが、お前たちの両親だった」
「父さんと、母さんが…?」

流石のアリサも両親の登場に疑問を抱いた。
二人の両親が死んだのは、五年前。
年がぴったりと重なる。

「お前たちの両親は、わざわざこの国にまで訪れ、お父様に誘拐を止めるよう説得した。だが、あえなく失敗して、二人ともお父様に殺された」
「!!」

ルイとアリサは目を見開く。
だがそれはすぐに怒りの表情へと変わっていった。
二人とも怒りを極限にまで押さえつけながら、マリナの次の言葉を待つ。

「まぁこれで邪魔者はいなくなったわけで、難なく、深夜に城に潜り込めた。そしてルイの眠っている部屋へ入って、ルイを連れ去ろうとしたら…。隣で眠っていたエミリアが目を覚まして、現場を目撃したんだよ。そしたら、エミリアは何て言ったと思う?」

けらけらと楽しそうに笑うマリナはルイにそう問う。

「…何と、言ったのですか?」

ルイがそう言うと、マリナは顔から笑みを消し、目を細めルイを睨みつけた。

「『ルイじゃなくて、私を誘拐してください』だってさ」
「え…」
「『ルイはジル王国に必要な人材だから、彼だけは連れ去らないでください。その代わりに、私を連れ去ってください。それに、ルイが傷つくのは見たくありません』」

マリナの言葉を聞いて、何かがルイの中に渦巻く。

「エミリアなりに、お前を助けようと思ったんだろうね。安心しな、生きてるから、ただ今は、牢屋の中だけどね」

そして次第に、ルイの目から涙がこぼれだした。
アリサにとって、初めて見るルイの涙。
いつの間にか二人の中には怒りは存在せず、ただ絶望があるだけだった。

「エミリアさんに、会わせてください、お願いします」

深く頭を下げるルイ。
その姿を見て、マリナはまた笑い出した。

「私がお前の頼みを聞くとでも思ったか?甘いんだよ。…あぁそれより、早くダージス様のもとへ行ったらどうだい?」

マリナの言葉の真意が分からず、首を傾げる。
ただ、嫌な予感だけが三人の中に芽生えた。

「今、お父様とお母様と一緒にいるのは誰?」

その言葉を聞いた瞬間、ルイは地面を蹴って勢いよく広間へと駆け出した。