星屑の劇団~第1幕・七色の岸辺~
昔々。10年くらい昔。
とある街で、一人の女の子が、死にました。
「かわいそうにねえ。今年から小学生だったはずなのに・・・。」
「まだ必要ないランドセル背負ってはしゃぐほど、元気な子だったのに。」
「親御さんもあんなに楽しみにしてたのにね・・・まさか車にひかれるなんて。」
「親より先に死んだ子は、地獄行きだって言うしねえ・・・。」
女の子は、宗教さえ違えば、天国にいけるはずでした。
ですが、その宗教のせいで、なんにも悪いことはしていないのに。
永遠に苦しみ続ける運命を背負わされたのです。
「やめて!壊さないで!せっかく積んだのに!」
「お母さん!お母さんに会いたい!」
「なんで僕がこんな目に遭わなくちゃならないの?助けてよ。」
賽の河原。
親より先に死んだ子供が行く地獄です。
河原の石を集め、10個積むだけという簡単なお仕事。
ですが、完成直前に怖い鬼さんに崩されてしまいます。
かわいそうな子供たちは、永遠にこの場所で苦しまなければならないのです。
賽の河原は、三途の川。
そこは、この世とあの世の境目。人々の運命が決まる場所。
毎日、毎日、いろんな人が泣き叫ぶのです。
先ほどの女の子、仮に「まゆ」と呼びますが、彼女もここにいます。
鬼達に言われた、「石を10個積めばおうちに帰れるよ。」という言葉を信じて、
ずっと、積み続けていました。
鬼達に積んだ石を壊されても、恨むことなくずっとです。
「あれ?この石、キラキラしてて綺麗。」
まゆがなにか見つけたようです。
透き通ったピンク色。おまけにイチゴの香りもします。
「鬼さん、みてみて。この石、綺麗だよ~。」
「ん?どれどれ・・・おお、これは飴だ。もうその季節か。」
「きせつってなに?」
「春とか夏とか秋とか冬とかのことだ。」
「なにがあるの?」
まゆが尋ねると、鬼は語り始めました。
「11月のとある日にちだけ、河原の石がすべて飴に変わる。
その日は、俺ら鬼達も子供達を自由にする。
飴玉積んでも意味がないしな。」
「おかしもらえるの!?うれしい!」
「これは、地蔵菩薩様からの贈り物なのだ。子供たちのために、
法力で石を全て飴に変え、それを舐めさせてくれるのだ。」
「わ~い。たのしみ!」
「明日の朝には川原は甘い匂いでいっぱいになっているだろうな。」
「じゃあ、川の向こうの人たちにも教えてくるね~。」
「ああ、行ってらっしゃ・・・・って。」
ざぶん。
「ちょ、ちょ、ちょ!!川は荒れまくって危険だぞ!それにこれは子供たちだけの
もので、罪を犯した者共には・・・・行っちまった。」
不幸中の幸いというべきでしょうか。
女の子は無事に川を渡って地獄に着きました。
「あついよ~。」
白装束に裸足のカッコじゃあ、さすがに危なそうです。
作品名:星屑の劇団~第1幕・七色の岸辺~ 作家名:bukuromasi