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君のいる場所~第二章~【三話】

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【三話】



廊下_


廊下の真ん中で話をしているカナデとアリサとルイ。
その三人に近づくひとつの小さな影。
その気配にいち早く気付いたのはルイだった。

「そこに、誰かいるのですか?」

柱の影に潜む者に声をかける。
つられてアリサもその柱を見つめ、誰かがいることを確認した。
いまいち状況を理解出来ていないカナデはアリサとルイの顔を交互に見ながら理解しようとしている。

「出来ればですが、僕たちに姿を見せてください」

ルイが優しい声色でそう言う。
すると柱から顔を出したのはマリナだった。

「マリナ様でしたか…」

ルイは安堵の息をもらす。
カナデは眉をひそめ睨みつけるようにマリナを見る。

「カナデ様、明日は私と一緒に外へお出かけしましょうよ。そこにいる世話係よりも、この国を私は理解しています。私がその二人よりも楽しませて差し上げますよ」

顔には満面の笑みが張り付いているが、声は冷たく、周りの空気が重くなるような感覚に陥った。
カナデは怯みながらも答えを返す。

「オレは、この二人と行きたいんです、さっきも言ったでしょう。貴女と行く気はありません。それにオレは…」
「カナデ様、おやめください」

ルイは、カナデの言葉を遮る形で言い放った。

「申し訳ありません、マリナ様。カナデ様とマリナ様が一緒に行動を共にするのは僕たちもとても喜ばしいことだと思います。ですが、僕たちの主人が、僕たちと外へ行きたいと言っています。ここは、ひとまず手を引いてはくださいませんか?」

ルイの言葉を聞くと、マリナは柱の影から出てきて三人の前に立つ。
とても、幼いとは思えないほどの空気が、彼女をまとっている。
カナデとアリサが恐怖を覚えるほどだ。
だがルイは、表情をピクリとも動かさずマリナを見据える。
そして最初に口を開いたのは、マリナだった。

「エミリア…」
「!」
「ルイ、お前はこの名前を知っているだろう」

カナデとアリサには聞き覚えのない名前。
だが、ルイがその名前に反応したということは、ルイの知り合いなのだろうか。
でも何故、マリナが、カナデやアリサも知らなかった名前を知っているのだろう。
そんな疑問が、アリサの中に渦巻く。
それはルイも同様で、動揺を隠し切れずにいた。

「何故貴女が、彼女の名前を知っているのですか?」

ルイは少し声を低くしてマリナに問う。

「エミリアがここにいるからだよ」

マリナの答えに目を見開くルイ。
その顔が見たかったとでも言うかのように、マリナは顔を歪めて笑った。

「…そんな…エミリアさんは、五年前に失踪したはず…何故こんな所に…」

そんなことを呟くルイ。
一方、全く状況が飲み込めない二人は、ただ唖然として立っていることしか出来なかった。

「エミリアは、シガン王国の奴らがジル王国の城に侵入して誘拐してきたんだよ。まぁ本当の目的は、ルイ、お前だったんだけどね」
「…僕が…?」

考え込むルイの隣で、アリサは心配そうにルイの横顔を見つめていた。
こんなに動揺しているルイは、初めて見る。
全く状況は飲み込めないが、ルイとエミリアという女性の関係が深いのいは確かだ。
マリナは相変わらず楽しそうに笑っている。
今度はマリナの笑い声だけが、廊下に響き渡っていた。