君のいる場所~第二章~【一話】
廊下_
三人の声がかすかに聞こえる。
内容はよく分からない。
だが多分、カナデとマリナの将来のことについてだろう。
それを聞いていて、あまりいい気分にはなれない。
それは勿論アリサも、その兄であるルイもだ。
ルイは、アリサの気持ちを分かっている。
前々から、薄々気付いてはいたことだ。
それが今日、確信に変わった。
アリサは、カナデのことが好きだ。
多分それはカナデも同じだろう。
恐らく、このことには二人とも気付いていない。
あの二人の、一番近くにいるのはルイだ。
あの二人のことはルイが一番理解している。
だから、この恋を、ルイは応援しようと思えた。
ルイは、少し俯いているアリサに目線を合わせる。
「アリサ、どうしました?顔色が優れませんね」
心配そうにアリサの顔を見るルイと目が合う。
「そんなことありませんよ、私は元気です」
元気であることを表すように満面の笑みを顔につくる。
「そうですか…ならよかった」
ルイはそう呟くと立ち上がり窓の外に視線を移す。
外には、キレイな白い鳥が優雅に空を飛んでいた。
マリナの部屋_
カナデは、部屋に一つしかない窓から外を眺めていた。
突然現れたマリナに部屋に連れ込まれ、カナデは少し不機嫌だった。
「折角、二人で外に出られたのに…」
無意識に呟くカナデ。
隣にいたマリナがその呟きにふと目を細める。
「アリサと行く約束をしていたのですか?」
「そうです。だから、この部屋から出て行かせてもらえませんか?」
マリナの問いに淡々と答え、冷たく言い放つ。
カナデの答えにマリナは胸中にもやもやするものを感じた。
「私が連れて行って差し上げますよ」
「…オレは、アリサがいいんです」
きっぱりと断られ、流石にショックを受けるマリナ。
だがそれと同時にアリサに対しての苛立ちも覚えた。
「私じゃ、だめなんですか?」
苛立ちの含んだ声色でそう問う。
カナデはマリナを見る。
「オレは、アリサと一緒にいたいんです」
そう言い放つと、カナデは部屋を出て行った。
マリナは、それを見送ることしか出来ずに、ただただその場に立ち尽くし、静かに涙を流した。
「アリサ、私は貴女を許しません…」
この場にいな者に殺意を向けながら、マリナはもう一度涙を落とした。
作品名:君のいる場所~第二章~【一話】 作家名:まおな