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けんじけんじ
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novelistID. 50375
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サル、大会議

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遠い昔、サルが大会議をしていた。
ジャングルの騒々しさに炎天下の中、かすかなそよ風を唯一の癒しとしてサルたちはかろうじて集中力を保っていた。

幹部らしきサルが額に汗を浮かべながら声を張り上げる。
 「皆の知ってのとおり、我々は人間に進化できるようになった!・・・だがしかし、進化というものは一長一短で必ずしもいいとは限らない。そこで、皆の意見を聞きたい!」
ザワザワしながらバナナを食う器用なサルたちをよそに会議は進む。


説明役らしき、学者っぽいサルが前に出てきた。彼、ナイル川大学を主席で卒業したらしいわよ、とサルたちの囁きが聞こえる。
 「えー人間の説明を始めます。人間とサルとの違いは主に二点です」
 「一つ目に、二足歩行にかわります」
サルたちのザワザワが増す。
 「もう二本はどうなるんだよ!」
 「色々します」

サルたちからは批判の大合唱だ。
 「足の負担二倍の代わりが目的不明かよ!」
 「何の意味があるのよ、その機能・・・」
 「四足でいいじゃねーか!」
唾とともに飛ぶバナナの欠片がとても汚い。
もうすでに進化否定の流れだが、説明役は説明をやめない。
 「えー2つめに、頭の重量、大きさともに大きくなり、賢くなります」
ザワザワに加えバナナの食うスピードも増す。
 どう賢くなるんだよ!」
 「色々です」

サルたちからはブーイングの嵐だ。
 「頭重くなったら更に足の負担増えるじゃねーか!ブーブー!」
 「頭が大きくって、私の小顔が台無しになるじゃない。ブーブー!」
 「今のままでいいじゃねえか!ブーブー!」
バナナの皮を投げつけられながら、説明役のサルは目に涙を浮かべ席に戻っていった。


そしてリーダーらしきオーラのあるサルが肩を怒らせながら前へ出てきた。
さすがリーダーサルは小さいことに動じないのか、投げつけられたバナナが頭に吸い付くように乗っかっているのに全く取ろうとしない。
「説明も終わったようだから採決をとる。進化賛成のサルはキレイなバナナを上に上げ、反対のサルは腐ったバナナを上に・・・」
みんなが一斉に腐ったバナナを上に上げようとした瞬間、

 
「決めるのはまだ早いぜ」


会場の隅っこから、いや木の上からカリスマあふれるサルが現れた。太陽と重なって、サルたちの目にはとても格好よく映った。
 「お、お前は・・・!今までどこいってたんだ!」
 「そんなことは今はいい・・・みんな、みんなは誤った選択をしようとしている。どう考えても進化だ。進化一択と言っていい」
あまりの急展開に採決用のバナナさえ食べようとするサルさえ居た。
 「なぜなら我々の長年の夢・・・バナナ大量生産が可能になるかもしれないからだ」
腐ったバナナを食べようとするサルも出てきた。
 「そっそんなことが可能なのか!?」
 「人間の知能を使えば・・・希望はある。ただの夢物語でなくなる日が来るやもしれんのだ」

自信満々のカリスマサルと対照的にこれまでに無く取り乱し、騒ぎ、まとまりのないサルたち。


只々、時間のみが過ぎていき、大議論はとても、とても長く続いた。



・・・



そして、今に至る。
作品名:サル、大会議 作家名:けんじけんじ