東の国の王子と西の国の王女
二つの隣り合う王国。
かつては互いに助け合い、民たちは自由に互いの国を行き来した平和な時代もあった。
しかし世の習いどおり、二つの王国は互いの領地を広げようと戦を繰り広げるようになり、多くの血が広い大地を染めた。
次第にいがみ合う心は王同士だけのものではなく、民にまでも広がっていった。
こうして二つの国は連日陣取りゲームを続け、王国は疲弊しきっていた。
辺りは暗く静まり返っており、時折フクロウや小さな生き物が駆け回る音しかしない。森の横の小さな丘の上、地上よりもほんの少しだけ空に近いところで、手を取り見つめ合う一組の男女を、淡く光る月だけが見ていた。
二人の身なりは平民よりも豪奢で、言葉や動作も洗練されている。
「ジュリエッタ、今日で最後だ。父上が僕たちの関係に勘付いて、明日僕は戦に行かなければならなくなった」
東の国の王子が言った。
「そんな!ジェイムズ、嫌よ。あなたに会えなくなるかもしれないなんて。あなたは王子なのよ、戦になんて行かなくても…」
ジェイムズは西の国の王女の手をぎゅっと握った。
「ジュリエッタ、聞いてくれ。民を駒のように扱う王のようにはなりたくない。僕は民だけに血を流させて、安全な場所でのうのうと生きているわけにはいかないんだ」
ジュリエッタは下唇を噛んで、それ以上子どもじみたことを言わないように耐えた。
私は王女。第一に考えるべきは民のこと。自分の感情に左右されて国を疎かにしてはならないのだ。例えそれが自ら望んでその役目に就いたわけでなくとも、彼と同じように、彼女にもまた生まれながらにして上に立つものの素質が備わっていた。
「私もお父様のようにはなりたくない」
二人は見つめあった。言葉にせずとも瞳を覗き込めば互いの思いは同じだった。
国が昔のように平和になって、また好きなように民が国を行き来し、互いに語り、歌い、笑あえる日がくればいい。
その時には自分たちも、横には常に相手がいて、手を取り合い共に国を治められるだろう。
かつては互いに助け合い、民たちは自由に互いの国を行き来した平和な時代もあった。
しかし世の習いどおり、二つの王国は互いの領地を広げようと戦を繰り広げるようになり、多くの血が広い大地を染めた。
次第にいがみ合う心は王同士だけのものではなく、民にまでも広がっていった。
こうして二つの国は連日陣取りゲームを続け、王国は疲弊しきっていた。
辺りは暗く静まり返っており、時折フクロウや小さな生き物が駆け回る音しかしない。森の横の小さな丘の上、地上よりもほんの少しだけ空に近いところで、手を取り見つめ合う一組の男女を、淡く光る月だけが見ていた。
二人の身なりは平民よりも豪奢で、言葉や動作も洗練されている。
「ジュリエッタ、今日で最後だ。父上が僕たちの関係に勘付いて、明日僕は戦に行かなければならなくなった」
東の国の王子が言った。
「そんな!ジェイムズ、嫌よ。あなたに会えなくなるかもしれないなんて。あなたは王子なのよ、戦になんて行かなくても…」
ジェイムズは西の国の王女の手をぎゅっと握った。
「ジュリエッタ、聞いてくれ。民を駒のように扱う王のようにはなりたくない。僕は民だけに血を流させて、安全な場所でのうのうと生きているわけにはいかないんだ」
ジュリエッタは下唇を噛んで、それ以上子どもじみたことを言わないように耐えた。
私は王女。第一に考えるべきは民のこと。自分の感情に左右されて国を疎かにしてはならないのだ。例えそれが自ら望んでその役目に就いたわけでなくとも、彼と同じように、彼女にもまた生まれながらにして上に立つものの素質が備わっていた。
「私もお父様のようにはなりたくない」
二人は見つめあった。言葉にせずとも瞳を覗き込めば互いの思いは同じだった。
国が昔のように平和になって、また好きなように民が国を行き来し、互いに語り、歌い、笑あえる日がくればいい。
その時には自分たちも、横には常に相手がいて、手を取り合い共に国を治められるだろう。
作品名:東の国の王子と西の国の王女 作家名:Lucia