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アナザーワールドへようこそっ!  第一章  【018】

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  【018】



「あ、あなたたちが……『特別招待生』ですって?!」


 フレンダ・ミラージュはそう言いながら、アイリから俺とシーナのほうへと『対象』を変えた。

 すると、俺たちの他に周りにいた『新入生』たちも……、


『お、おい……あいつら二人、今、『特別招待生』だって言ってたぞ……』

『あ、あいつらかっ! 確かに今年の新入生には『創設されて初の特別招待生がいる』というウワサがあったが、本当だったんだな!』

『『特別招待生』……だって! すごーい、どの子、どの子?』

『なんだ、なんだ? どうしたー?』

『いやな、実は、あの『特別招待生』に選ばれた新入生が今、そこにいるそうなんだよ!』


 ザワザワザワザワ……。


 気がつくと、俺たちの周りには『新入生』だけじゃなく、式典を手伝っていた『先輩』らしき生徒も混ざり、人だらけになってしまった。

 すると、フレンダ・ミラージュが、

「こ、これじゃあ、マトモにお話なんてできませんわっ! と、とりあえず、後日、あなたたち二人には改めてお話を聞かせてもらいます! ではっ!」

 そう言うと、フレンダ・ミラージュは『取り巻き連中』と一緒にその場所から離れていった。

 そして、俺たちもまた、この場から、急いで『避難』することにした。



 俺たちは一旦外に出て、式典が始まってから再度、会場内に入った。


「と、とりあえずこの辺でいいんじゃない?」


 と、アイリが新入生の列の後方のほうを指差した。

「そうだな、この辺なら、あいつら(フレンダ・ミラージュ)もいなさそうだし、俺たちに気づいている生徒もいないみたいだから……大丈夫かな」
「そうね、とりあえずこの辺にしましょ」


 入学式は、『アカデミー長のあいさつ』がちょうど終わった後だった。次は、『女王陛下のあいさつ』が始まるとこらしい。


「――続きまして、リサ・クイーン・セントリア女王陛下の祝辞。全員起立っ!」


 と、舞台の左下で『司会進行役をしている女性』が快活明瞭な声で場を律した。

 全生徒、全職員、その場にいる者全員が起立する。


 おそらく学校(アカデミー)の先生なのだろう…………キリッとした目元や、角ばった眼鏡をかけたその風貌、すごく美人ではあるが、でも、すごく厳しそうな女性という印象を受ける。

 できれば、あまり関わりたくない感じのアレです。


 そして、その司会進行の女性も舞台の上に身体を向ける。

 すると、舞台の上手(客席から観て右側)から、まず、四人の護衛の男たちが入り、四隅に移動……そして、この国の『元首』である『リサ・クイーン・セントリア女王陛下』が現れた。


「皆の者……着席っ!」


 と、リサ・クイーン・セントリア女王陛下は第一声を発した……………………とっても、かわいい声で。


「「ええええええーーーーっ! あ、あの子が、女王陛下っ?!」」


 俺とシーナは、驚きのあまり、音量の上がった声で叫んだ。


 いや、だって……、

 そりゃ、ビックリしますよ……、

 その舞台に立っている『女王陛下』は、

 大人の色気漂う女性………………ではなく、

 アイリやシーナとあまり変わらない……『幼女』だったんだものっ!


 俺とシーナは、周りがシーンとしている中、大きな声を上げてしまった……しかも、『女王陛下』に対して『あの子』呼ばわりしたもんだから、周りは『こいつら大丈夫か? バカ? バカなの?』という感じのザワザワ……があたりをつつんだ。

 またもや目立ってしまった…………学習能力の低いバカ二人(俺とシーナ)である。

 ちなみに、アイリは横で、『バカ……』と呆れていた。

 一同、意見一致。

 そりゃ、そうだ。


 すると、女王陛下の四隅に立つ『護衛の男たち』が俺たちを睨んだ。

 あと、『司会進行役のメガネツン女史(デレが皆無に感じたのでツンのみ)』も睨んだ。

 あと、『アカデミー長』は………………あれ? ちょっと笑ってる?


 とにかく『四面楚歌』な俺とシーナは、『全力謝罪(出し惜しみはナシだっ!)』の準備をしていた…………まあ、それくらいで、許してもらえるわけないだろうけど。

 と、俺とシーナが覚悟を決めて、いざ『全力謝罪(出し惜しみ無しバージョン)』を敢行しようとした………………その時っ!


「ようこそ、ハヤト様! シーナ様! はじめましてっ! 今日、この日が来るのを、わたくしずっと心待ちにしておりましたっ!」


 と、『女王陛下』からのまさかの『ラブコール』。

 すると、皆の視線は、俺とシーナから『女王陛下』へと『ベクトル変換』された。


「…………あっ! し、失礼しました。失言でした。え、えーと…………と、とりあえず、コホン………………もう一度やり直しますっ!」


 そう言って、『リサ・クイーン・セントリア女王陛下』は上手へと下がっていき、もう一度、舞台へ登場した。


「……コホン。皆の者、入学おめでとうっ! わたくし、リサ・クイーン・セントリアは、君たちの入学を心より歓迎する。王立中央魔法アカデミー…………『セントラル』へようこそっ!」


 と、キラキラ輝く笑顔と、天使のようなかわいらしい声を大きく張り上げ、両手を広げるしぐさであいさつをした。


 ワアアアア……パチパチパチ。


 会場が拍手と喝采で包まれた。


 そして、俺とシーナは、ひそかに願った…………、


((このままの流れで、さっきのことは無かったことになれーっ!))


 そして、司会進行役の『メガネツン女史』が、


「――以上、これにて入学式を終了します。この後、新入生は各自のクラス……」


 と告げ、入学式は無事、幕を閉じようとしていた。


 それにしても、この世界の学校の入学式は、こんな簡素なものなんだな。『アカデミー長』と『女王陛下』のあいさつしかなかったぞ?…………と、アイリに聞いてみると、

「うん、こんなもんだよ……て言うか、学校の入学式で『アカデミー長』と『女王陛下』以外に話をする必要のある人なんて……いる?」

 仰るとおり。

『どこぞの国の教育現場のお偉方』に聞かせてやりたいセリフです。


 その時、


『すみませーん、言い忘れてましたーっ!』


 と、まさかの女王陛下の声。

 生徒も職員も皆、ビックリして、さきほどの興奮状態からビシッと姿勢を正し、改めて舞台上の女王陛下へと向き直した。

『えー……コホン。『特別招待生』の『ハヤト・ニノミヤ』と『シーナ・ニノミヤ』、両名は式典終了後、わたくしとの謁見がありますので理事長室まで来るように、以上っ!』

 と、言ってリサ・クイーン・セントリア女王陛下は護衛の者と一緒に下手へと下がっていった。


 女王陛下が、消えかかっていた『注目』という名の灯火に『燃料投下』したおかげで再燃。その後、俺とシーナが会場全員の視線を独占したのは言うまでも無い。