白と黒の世界
「それは単なる綺麗事だよ。」
言われて気づく、社会の色。この何が正解なのか分からない世界には、白と黒よりもその狭間の方がはるかに多い。白と黒しか許されないと信じていたこの世界にはその色が確実に、そして想像より多く存る。邪魔な色の多さに、その事実に激しい憤りを感じた。少しでもその間の色を認めてしまえば、自分自身の欠落した部分を認めてしまうような気がして、落ち度な気がして仕様がなかった。
「じゃあ、全てが白黒の世界であれば良くなるの?」
逆に問われる。それが理想だと思っていたが、その答えに対する正しい答えを自分はもっていない。だって、でも、だけど。言い訳ばかりが脳裏を掠める。不意に自身に対して言いようのない不安感に苛まれた。正しい答えをもっていないのであれば。それならば、自分とて白と黒の狭間だということ。ただ、素直に認めればいい。そして、自分は完璧ではないことを認めればいい。そんな簡単な事に目をつぶって盲目になっていた。そう気づいた時、世界が色付いた。鮮やかな彩をしていた。
「ね?白と黒の世界よりも素敵でしょ?」
白と黒の世界。それは幾何学模様のように正確で、計算されている世界。けれど、現実は白と黒、そしてその狭間の色が数え切れないほど無限に広がっている。綺麗だと思った。
白でも黒でもないその彩に魅了された。
「狭間が必要なんだ。この世界には。」
息が詰まりそうな白黒から抜け出せば、あまりにも多くの可能性の彩が見えた気がした。