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アナザーワールドへようこそっ!  第一章  【015】

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  【015】



 俺とシーナは一通り、アイリから『特別招待生』について説明を受けた。

 アイリを騙したようで少し申し訳なく思うところもあるが、それ以上に、『特別招待生』だけでなく、このアナザーワールドについての多くの情報も手に入ったのでとても有り難かった。



 まず、この『人間族』が暮らしている大陸のことを『中央大陸』と言い、その『中央大陸』で暮らす『人間族』を統治しているのが「セントリア王国」という国……そして、この国のトップは『女王陛下』であるということ。

 また、その国では『魔法使い』のことを『魔法士』と呼ぶらしいということ。

 そして、その『魔法士』を養成する機関として『王立中央魔法アカデミー』という学校があり、『13歳から18歳』までの『6年間』そこで学び、卒業すると『女王陛下』を守る『国防に関する機関』に配属されるということ……その代表例が、さっき赤い鎧を纏っていた兵士のいる『王立軍』への配属だったりするということ。

 あと、この『中央大陸』は『5つの地区(エリア)』で分けられていて、学校も各地区(エリア)ごとに5つあるということ。

 また、自分とシーナがこの『王立中央魔法アカデミー』……通称『セントラル』では『特別招待生』という『女王陛下』の『勅令』で誕生した『特別枠の生徒』であり、『セントラルの生徒』だけでも目立つのに、その中でも『さらに目立つ存在』であるということ。

 そして、『目立つ存在』ということは、それだけ『今後、トラブルに巻き込まれる状況に立たされるであろう』と予想できるいうこと。


 シーナを見ると、俺以上に顔が青ざめていた…………無理もない。


 一瞬、俺は、こんな『特別招待生』のような『目立つもの』は断ることもできないかと考えてみた…………だが、そんなことをしてしまうと、学校には入学できないだろう。理由は、俺もシーナも……『魔法を使えないから』だ。

 俺もシーナもこのアナザーワールドで使える力は(シーナはアナザーワールドでは使えないが)、『媒介役(メディエーター)』の力である『神通具現化(ディバイン・フォース)』であり、『魔法』とは違うとシーナが前に言っていた。だから、この『特別招待生』を断ってしまったら、『魔法を使えない俺たち』は入学できないだろう。

 となると、やはり、この状況を受け入れるしかないってことになる。


 すると、ここでアイリが……、

「ハヤト様もわたしに他に質問などはありませんか? わたしはまだいろんなこと知っていますからっ!」

 と、『特別招待生』である俺たちにアピールしている。

 ちなみに、俺たちは何も知らないし、何の権力も無いのに、俺たちに、そんな、『わたし、特別招待生の資格があるでしょ?』という自分をアピールしているアイリを見ていると……罪悪感に苛まれる。

 で、でも…………でも、もっと情報が欲しいっ!

 だけど……、


 そして……、


「いや、もういいよ、アイリ、ありがとう。さすが『特別招待生』を狙っているだけあるな。俺も応援するし、何か力になれることがあったら何でも言ってくれ!」

 と、俺はアイリをこれ以上、騙すことに耐えられなかった……だから、そう言って質問は終わりにした。

「そうですか? わかりました…………あ、それじゃあ、明日はどうします?」
「えっ?……明日?」
「?……はい。だって、明日じゃないですか………………『王立中央魔法アカデミー』の入学式」


「「ええっ?! そうなの?!」」


 俺とシーナは見事にハモった。

「あ、もしかして勘違いしてました?『セントラル』以外の『四地区の入学式』は二日後ですからね……『特別招待生』で初めて入学する一年生』の方々は、今までとスケジュールが違うからよく勘違いする人が多い、て聞きますもんっ!」
「そ、そう、そうっ! いやー……あやうく勘違いするところだったよ、ありがとうアイリ……」
「そ、そうなのっ! もう、お兄ちゃん、ちゃんと確認してよねー……ま、間違えるところだったじゃないっ」

 俺とシーナはアイリの話に乗っかってそれに合わせた。

 とりあえず、アイリも神父も特に疑っている様子は無いようだった…………というより、『特別招待生』という、ちょっとした『水〇黄門の印籠』みたいなものがあったから、たぶん疑う素振りを見せていないだけ、て、ことかもしれないけどな。

「あっ! ハヤト様、シーナ様、それじゃあ今日はぜひ教会(ウチ)に泊まっていってくださいっ! それと明日は、わたしと一緒に『セントラル』へ行きましょうっ!」
「えっ? 一緒に? てことは……アイリちゃんも『セントラル』の生徒なの?」
「はいっ! 今年の『セントラル』の入学試験に受かったのでお二人と同じ一年生ですっ!」
「そ、そうなんだ……」

 うーむ、これはいろいろとマズイのでは? と俺は思ったのだが、シーナは少し違っていた。

「そっかー、アイリちゃんも『セントラル』の同じ一年生なんだー! ヨロシクねっ! ところで、わたしとお兄ちゃん、実は『特別招待生』のことを三日前に教えられて正直アタフタしてたの。だからこの後、夕食の後にでもいろいろと教えてね」
「は、はい、わかりました、シーナ様っ!」
「あ、あと、もうひとつ……」
「……?」
「これからは、わたしやお兄ちゃんのことは、『ハヤト』『シーナ』で呼び捨てにすること! これは『特別招待生』であるわたしからの『命令』です。わかりましたね? 神父さんもですよ?」

 シーナはアイリと神父に『特別招待生の命令』として二人に強調して伝えた。

「め、命令というなら……従います、ねっ? お父さん?」

 アイリは『シーナの気遣い』に気づき、それに素直に甘えた。神父のほうも、娘とシーナの気持ちを察し、

「お、お言葉に甘えさせていただきます……ありがとう、シーナさん、ハヤトさん」

 と、感謝の言葉を素直に伝えた。


「じゃあ、もう家に帰ろ、お父さんっ! さっ、行こう……シーナ、ハヤトッ!」


 アイリは、年の近いシーナや、少し年上の俺を、『新しい友達ができた』という喜びに溢れた笑顔で、俺とシーナの手を取り、足早に教会への家路を辿った。