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今日もポラリスを見つめて

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ちょっと歩いた先に市民プールがある。そこの門の前で友達に会った。幼なじみで、小学生の頃一緒に水泳を習っていた。

「よっ!和弥!」

なんだ。翔平かよ。何してるんだよ。

「ちょっと泳がない?競争する相手がいないんだよ。
ほら、俺、速いじゃん?和弥くらいだよ。俺と対等に泳げるの!だからちょっと付き合えよ!」

わりぃ!俺、急いでるんだよ。手怪我しちゃってさ。病院行きたいんだ。怪我って言えば、翔平、海で溺れてる小学生助けたって聞いたけど、スゴいなお前!

「俺、ライフセーバーになるの夢なんだ。オリンピックも格好良いけど。人の命助けられる仕事ってそっちの方が格好良いじゃん!!お前が溺れたときも助けてやるよ(笑)とりあえず25mだけ付き合えよ!」

悪いな!また今度なっ!とりあえず病院終わったら連絡するからさっ!俺、行くわ。

「おぃ!和弥!お前の夢は何だよ!俺だけ話すのあれじゃん!」

俺の夢?俺は教壇に立つんだ。教師になるんだ。

「その夢、本当に叶えたいなら、この先は行っちゃダメだ。」

何なんだよ!さっきしげさんも同じこと言ってたけど、俺の学校も病院もこの先なの!だから、行くわ!悪いな!今度クロール競争するから勘弁してくれっ!
俺は止める翔平を横に市民プールを通過した。

あ、翔平の連絡先!って思ったけど、プールに来れば会えそうな気がして引き返さなかった。

何だか今日は知り合いによく会うな。と思いながらも急いで病院に向かう。何だが右足も痛い気がしてきた。きっと、右半身をぶつけたんだな…。

痛みにイライラしてきて、煙草に火を付けた。ハイライトのメンソール。俺の憧れの先生が吸っていた煙草。この匂いを嗅ぐと、頑張っていたあの頃に戻れる気がして気に入って吸っている。

足も痛い。手も痛い。頭も痛い。そんなに時間はたっていないはずなのに痛みが重くなっていく。タクシーでも通らないだろうか。病院を目前にして弱音を吐き出した俺。相変わらず指は曲がらない…。


一服終えようとした頃、後ろから話しかけられた。
「まだ、未成年じゃなかった?君?」

…………

警察かと思った。だって俺は19だから。確かに煙草はまだ、ダメだ。痛みは増すのにここで警察かよ…

と顔をあげた瞬間。

佐藤先生!!!


「久しぶりです。和弥くん。」

***
佐藤先生こそ俺の恩師。数学の先生になろうとこの人に出会って決めたんだ。先生は塾の先生で俺の苦手な数学を楽しそうに解く不思議な先生だった。数学を嫌いにならないで。逃げるのは止めて向き合えばきっと解けるようになるから!卒業までに君に数学を好きだと言わせよう!とキザな事を言ってきたが、俺はその魔術にかかり見事に工学部に合格。数学平均23点だった俺がだよ?中学を卒業する頃には平均95点までに上がったんだ。この先生はどんな魔術を使ったか知らないが、俺はこの人に出会ってからパズルのように方程式を解けるようになった。数学から逃げてた自分にも向き合えて、数学を好きになれて、面白さ。自分の中だけに留めておきたくなくて数学の教師になるって決めたんだ。だから、尊敬してるんだ。佐藤先生を。

***

先生、何でここに?

「ここら辺で煙草を落としてしまってね。知ってるでしょ?私が煙草好きなこと。どうやら、落とした煙草は和弥くんの持ってるそれのようだ。」

俺は、ライターと煙草を箱のまま佐藤先生になろうと取られた。

先生!それ、俺のっす!

「20歳になったら、返すからそれまでは預かっておくよ。20歳になったら、取りにおいで。それまで、私は塾で待ってるから。」

先生、いいよ。それあげるから。自分のは後で…
20歳になったら買うよ!だから、それあげるわ。

「違う!約束するんだ。必ず取りにくると。後1年後だぞ。絶対取りに来なさい。和弥くんがどんな大人になるのかも私は楽しみなんだよ。」

分かった。分かった。約束する!一年たったら取りに行くから!

先生はニッコリ笑ってた。


俺、そろそろ行きます!
んじゃ、先生!一年後。

先生に手を降って、俺は歩きだした。

あ、先生に病院まで乗せて貰おぅ!と振り返った時には先生の車は反対の方に出発していた。キザな先生らしく。真っ赤なフェアレディZに乗ってね。


そろそろ病院につかないと午前中の診療終わっちゃうんじゃないか?と不安になりながらもちょっと早く歩く。


頭が痛い。