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アナザーワールドへようこそっ!  第一章  【013】

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  【013】



「何で、言い出しっぺのお前が『特別招待生』のことを知らねーんだよ?!」


「しょ、しょうがないでしょ! さっき兵士に見せたこの『紙』は『神』が用意したものだったんだから。あ、ちなみに今のは『神』と『紙』をかけたダジャレではないからね、お兄ちゃん」
「別に誰もそんなこと聞いてねーよ! て言うか、この後も、その『妹キャラ』そのままで行くんか?」
「うん。とりあえず、これからクセづけようと思ってるから、自分たち以外に人がいてもいなくても、これでしばらくはいくね。あ、でも、必要なときはキャラ戻ると思うから……ということで、よろしくお兄ちゃんっ」
「あ、うん」

 まあ、とりあえずシーナさんの好きにしてください。

「それにしても……わたしも、この『特別招待生』ってのが何なのかまでは知らされていなかったから、さっきの兵士さんの変わりっぷりには、すごく動揺したよ」
「何々だよ、一体。この『特別招待生』って……」

 俺とシーナは、神父とアイリに聞こえないよう、小声で言い合っていた。

「と、とにかく、これは『神』が用意した隼人を……じゃなかった、お兄ちゃんを学校へ入学するためのアイテムなんだから、とりあえず、これを使う以外に選択肢は無いよ、お兄ちゃん。だから、もう、あきらめて……腹を括れっ!」

 おい、最後、いつものシーナに戻ってるぞ。


 すると……、


「お、おーい、旅の人ーーっ!」


 声のほうを向くと、神父とアイリが「組み手」を終え、俺たちのほうへ走ってきた。

 特に、アイリは猛スピードで俺とシーナのところへすっ飛んで来た。


「ね、ねえ……君たち二人……『特別招待生』って本当?」


 ドキッ!

 き、聞かれてた! ま、まずい……ど、どうしよう。


 すると、後ろから神父がやってきて、

「こ、こらっ! アイリ! いきなり、そんな「不躾(ぶしつけ)」な質問するんじゃありません!」

 と、アイリを叱った。

 ナイス! 神父さん!

「コ、コホン。それで……その、『特別招待生』って本当なんですか?」


 やだ……、お父さんも「不躾(ぶしつけ)」!


 この親子、ある意味で「危険」だな。

 それにしても……どうしよう……こっちだって、この『特別招待生』ってのがどういうものか知らないというのに……どう答えればいいか。


 すると、ここでシーナがファインプレーを見せる。


「はい。実は……わたしと兄は兄妹で『特別招待生』として『王立中央魔法アカデミー』へ入学することになっています。ですが、このことを人に知られると、いろいろと不都合が増えるので、なるべく控えるようにしていたのです…………神父さん、黙っててすみませんでした」

 と、シーナが神父に向かって頭を下げた。

 シーナは、『特別招待生』のことは知らないと言っていた……でも、今、あたかも知ってるそぶりで話せているのは、さっきの兵士の態度や、この『特別招待生』という言葉(ワード)を踏まえて、カマをかけているからだろう。実際、シーナは今、神父に『王立中央魔法アカデミーに入学する』ということしか言っておらず、あとはこの言葉(ワード)から連想して、『それなりのこと』をちょっと付け加えているだけに過ぎない。


 しかし、どうやらそれだけでも『効果覿面(こうかてきめん)』だったようだ。


「や、やめてください! そんな……『特別招待生のシーナ様』にそんなことされたら、私のほうが困りますから!……だから、顔を上げてください!」

 シ、シーナ様……て、そんな『言葉遣い』が変わるほどなのか、この『特別招待生』というのは。

 大の大人が、初対面の女の子に対して、そこまで態度が変わるということは、『特別招待生』というのは、よっぽどの『扱い』なんだな。

「わ、わかりました……ですが、神父。これだけは約束してください」
「な、なんでしょう……?」

 と、言って、シーナは頭を上げ、

「わたしたち兄妹が『特別招待生』であっても、今後は普通に、最初出会ったときのように、『シーナさん』『ハヤトさん』でお願いします。これが、わたしが恐れていた『不都合』のひとつです。どうかお願いします」

 そう言って、シーナは再び、頭を下げようとした。

「わわっ! シ、シーナ様……やめてください」

 すると、すぐに神父がシーナが頭を下げようとするのを止めさせた。

「わ、わたしもシーナ様の意向を汲みたいのですが、如何せん、『特別招待生』というのは、この国……『セントリア王国』の『女王陛下』が直接お決めになった『勅令』ですから……」

 神父がしどろもどろで答えていると、

「ちょっと、ちょっとー、あんまりお父さんのこと、いじめないでくれる? シーナ様……」

 と、アイリが横から神父とシーナの間に入ってきた。

「だってさ、シーナ様がそんなこと言っても、女王陛下の『勅令』を破るようなことがあると、牢屋に入れられるのはお父さんなんだよ? だから、そんな『特別招待生』からそんなお願いされても、お父さんは、ただただ、困るだけなの、わかります?」

 と、アイリは『特別招待生』という、何かよくはわからないが、そんな『大きな特権』を持つシーナに対しても、言葉は選びつつも、真っ向から自分の意見をぶつけてきた。

 正直……男よりも男らしく見えた。

「ちょ、ちょっと待って、アイリちゃん。わ、わたしは別にお父さんを責めてるわけじゃないのよ? ただ、余所余所しくされるのが嫌だから、普通に接して欲しいと言っただけなの」

 と、シーナはアイリに弁解をした。だが、

「そうかもしれないけど、女王陛下の『勅令』を受けてる『特別招待生』なんだから、そんなことできるわけないじゃない?」

 と、ここでシーナが何か閃いたらしく、口元を一瞬、ニヤッとさせ、

「アイリちゃん、『特別招待生』のこと、詳しいんだね……どこまで知ってるの?」

 と、イタズラ口調でアイリに尋ねた。

 すると、アイリはにっこり笑って、

「知ってるも何も……わたしは『特別招待生に近い女』なんだよ! わたしほど、『特別招待生』のことを知っている人なんていないんだからっ!」

 と、自信たっぷりにシーナに宣言する。

「クスッ……それじゃあアイリちゃん、わたしとお兄ちゃんに『特別招待生』のこと、詳しく教えてくれる?」
「! い、いいですよ……っ!」

 シーナは、そう言って、あたかも『あえてアイリにしゃべらせて、『特別招待生』になる資格があるかどうか試してあげる』風な言い方で『挑発』した。そして、アイリもまた『シーナが、わざと自分に『特別招待生』のことを説明させて、その資格があるかどうかを試している』と察し、そのシーナの『挑発』に乗った。
 

 つまりは……アイリは、見事にシーナの作戦にハマったということになる。


 シ、シーナって、ただの『おバカ』なのか、それとも『全て計算している策士』なのか(さすがにそれは無いと思うが)、ちょっとよくわからなくなってきた俺は、戸惑いつつも、シーナという女の子に少し興味が湧いてきていた。