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あと5分が30分

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…いい加減にしろよ。
俺のイライラはもうマックスだ。
今夜は大事なパーティに呼ばれている。
パーティ開始は7時。
後30分しかない。
今から出ればぎりぎりで間に合う。
が、肝心の俺の妻の準備が出来てない。
妻には前々から伝えてある。
5時半には家を出る。
と。
本当なら出発時間は6時20分でもいいのだ。
が、あいつは時間通りに物事を進めるということが出来ない。
だから、かなり多めに時間を見通して出発時間を告げていた。
それなのに、やっぱりこれだ。

早くしろよ。

30分前にせっついてみた。

「後5分で終わるから」

と言いながら、あいつは鏡を見ながらなにやらポーズをとっていた。

もうこれ以上は時間は延ばせない。
俺は一人で出発した。


「君の奥さんがこられなくて残念だよ。可愛い奥さんだと言うのを聞いていたから、ぜひお目にかかりたかったんだがね」
と言われながらパーティ会場を後にした。

あいつは怒っているだろうか。
仕方ない。自分がまいた種だ。
玄関を開ける。
妻の名前を呼びながらリビングに入ってみる。
そこには、カーラーつきのドライヤーを髪に絡ませたままの妻がソファーに座っていた。

「…呼んだのに」

妻は目を真っ赤にしていた。
ずっとそのまま俺の帰りを待っていたのだろうか?
少しばかり髪のウェーブが気になり、カーラーを使い出したらそのまま髪に絡まってしまったらしい。
取れなくて、あせって、俺を呼んだが、既に俺は家を出た後だった。

「…電話をくれたらすぐに戻ったのに」

絡んだ髪をほぐしながら言う。

「だって…」

大事なパーティだったんでしょ。
口を尖らせて言う。
彼女の姿はぐちゃぐちゃになった髪のほかは完璧だった。

今度は、彼女の準備が出来るまで、ずっとそばにいてやろう。
ちゃんと時間通りに出来るように、俺がついてやろう。

「ごめんよ」

そういって、俺は彼女にキスをした。
作品名:あと5分が30分 作家名:moon