夢と少女と旅日記 第5話-2
L.E.1012年 5月17日
今度はハンターギルドが動き出したとのニュースがありました。夢魔を退治するためにハンターを募集するんだとか。募集要項はただ一つ、「一度でも夢魔と接触したことがある者」。
なるほど、考えていますね。アレクサンダー王の方は、夢の世界に入る段階で苦しんでいますが、これならその心配はありません。もちろん、募集要項の通りの人が来てくれるならばですが。
もしかしたら、ハンターギルドの会員にウェイクリングのことを知っている人がいるのかもしれません。私の知る限り世間には公表されていませんが、ハンターギルドの者ならば、それくらいの情報はあるでしょう。
つまりウェイクリングを見せさえすれば、私のような者でも取り入るチャンスがあるかもしれないということです。
私は団体に属するのが嫌いなので商人ギルドにも入っていませんが(なんで自分で稼いだお金を一部とは言え、他の人に取られなきゃいけないのか)、ナイトメアの情報が得られるのならありでしょう。
計画の説明会が早速明日あるようなので、話を聞きに行ってみようと思います。床の上でハンカチ被って寝ている妖精と一緒に。……気付かず踏んづけちゃいますよ、そんなところにいたら。
L.E.1012年 5月18日
ええっと、今日の日記は久々に長くなりそうですね。いいニュースと悪いニュースがあるってやつです。まあ、結論から書くよりも、順を追って書いていきましょうか。その方がいい感じに情報を整理できますし。
まず昨日の日記の通り、私とエメラルドさんでハンターギルドの本部へと行ってきました。受付の人に話をすると、大会議室という部屋に通されました。席はまるで劇場かのように階段状に用意されていて、私たちが来た時点で既に100人近い人たちがいました。
もちろんこの人たち全員がウェイクリングを持った人たちとは限らないでしょう。何か別の方法で夢の世界へとダイブすることができるのかもしれませんし、募集要項を無視して来てる人もいるかもしれません。
しかし、ぱっと見たところ、ほとんどの人たちの側には妖精も一緒にいました。ならば、私と同じような人たちということです。なんの実績もない私がすんなり通されたのも、妖精であるエメラルドさんをつれていたことで、ドリームダイバーだと分かったからでしょう。
中央にあるモニターには、「席についてしばらくお待ちください」と表示されていました。私は適当に席を選びながら、あのモニターの前でハンターギルドのお偉いさんが今後の計画について説明するのだろうと思いました。
そのときにはまだ気付いていませんでした。ただ、あたりを見渡してみて、腕っ節が強そうな人や魔法使いっぽい人たちが多いなあと思うばかりでした。
彼らの何人かは知り合い同士で会話しているような人たちもいましたが、聞き耳を立ててみたところ、元々ハンターギルドに所属するハンターの人たちもいるような感じでした。
そうこうしているうちに、にたにたと気持ち悪いちょび髭のおっさんが現れて、モニターの前に立ちました。私が想像していたよりも若く、40歳前後くらいだろうと思いましたが、ハンターギルドのお偉いさんであることはすぐに分かりました。
そして、彼は「うぉっほん」と偉ぶった咳払いをして、口を開いて説明し出したのです。思えば、そのときから嫌な空気を感じ始めていました。
作品名:夢と少女と旅日記 第5話-2 作家名:タチバナ