ゾディアック 5
~ 33 ~
風が強くなってきた・・
木立が大きくしなり ザワザワ・・音をたてる。
喫茶店から外に出ると、バサバサバサ!カラスが飛び立った。
「 女神島の カラスの神話は知っていますか? 」オヤジが言った。
「 はい、父から聞きました。女神がこの島に降臨した時 地上界はまだ真っ暗闇だったので、
天の遣いのヤタカラスが先に飛んで 女神の鎮座する場所を教えたという話です 」コミュウが答えた。
神話 寓話的な話を真実の話として聞く・・コミュウに初め出会った時に聞こえた言葉だ。
「 ヤタカラスは どんな暗い闇の中でもいち速く飛んで、行く先を導きます 」オヤジが言った。
「 どんなに見えない意識の闇の中も 概念に摑まらずに 」ナアナが言った。
「 では、皆さんで言霊を歌いましょう。・・風を感じる 良い場所がありますか? 」オヤジが言った。
「 女神島で一番美しい 聖木の下はどうでしょうか 」ナアナが提案した。
やっとだ・・ 私はほくそ笑んだ。
川を渡って、崖を登り・・ 聖木の下に着いた。
風が、私達の足元から巻き起こり 目の前に立つ大樹の枝を雄々しく揺さぶった。
ザワザワザワ・・ ザワザワザワ・・
「 気高く・・ 気高く・・ 」誰かが囁く
いきなりオヤジが歌い始めた。
半音階の物悲しい響きのメロディーを、鼻に抜けるような子音と 鳴いてるような母音を伸ばして繰り返し
イルカやクジラの鳴き声、まるで猫が鳴いているような歌だった。
「 黒猫・・ 」私は前世のウリエルを思い出した。
昔 森の中で、風の音・・ 木漏れ日の煌めき・・ 静かな湖の側で歌った
風が吹いて・・ 水を走らせる・・
子音は風で、母音は水
私達の身体の中を、ナディアが駆け巡る
紺碧の夜の帳が降りると、妖精達が囁く・・ 月光の下
あなたは行かねばならない
何処へ?
遥かな星を越えて、遠く・・
時の果てまで
「 白い倍音の 魔法使い 」いきなりオヤジが言った。
「 白い倍音の魔法使い・・ 歌って下さい 」
私は、目を閉じ・・ 前世の歌を、歌い始めた。
私は 魅惑するために力を与える
受容性を指揮しながら
輝きという 倍音の音とともに
私は 永遠の出力を確信し
スピリットの力に導かれる
輪廻という同じ時を回し
ダルマに向かって起動し始める
ゾディアック
同じ宇宙に 同じ時間はない
私は銀河の中心にいた。
青いスパークが起こり 気が付くと
静かな湖のほとり、森の小さな小屋の木の下 揺り椅子に腰かけていた。
鳥がさえずり、風が 木々の葉や草を揺らして通り過ぎて行く
光の中に遊ぶ、小さな女の子と黒猫を見ていた。
懐かしい・・ 幸せの陽だまりの中、これが永遠に続くと思っていた
あの女の子は 誰だ?
私はもう一度よく見ようとしたが、光の照り返しが眩しすぎてよく見えない・・
あの子は・・ 知っている。誰だっけ?
思い出そうとした瞬間、私の中の何かが拒むように・・ 頭痛と吐き気が襲った。
悲しみが沸き起こり・・ ガボガボガボ・・ 肺に水が流れ込み息が出来ない。頭上の揺れる水面に 人々の叫び声が聞こえた。
あの日、あの子は どうなったのだろう・・ 森に捨てられていた女の子、一緒に暮らしていた。
「 あの子は・・ 」視界が闇に包まれた死の瞬間、ナアナが現れた。
白い装束に身を包み、大きなライオン像の下 神輿に担がれていた。エジプトの時代
歓喜の群集に見送られ 彼女は遠い異国の地へ旅立って行った。
私の心は、抜けるような青い空と裏腹に 張り裂けそうな悲しみに包まれていた。
これは・・ 私の前世が体験した、マインドの旋律だ。愛する者との別離
私のナディアが奏でる、アイの歌
幸せの森 陽だまりの中、遊ぶ 小さな女の子は・・ あの前世のナアナだった。
~ 34 ~
着信が光った、ナアナからだ。
「 ねえ・・マリオン、私あの言霊の人に 一緒に寺院に行こうって誘われたんだけど・・ 」ナアナが言った。
出たな オヤジ・・ 「 え?何て言ったの、マリオン 」ナアナが聞き返した。
「 いや・・ 何でもない、言霊を教えてもらうんだ? 」私は言った。
「 うん、でも・・ 2人だけっていうのは、ちょっと抵抗があるんだけど・・ 」
「 大丈夫だよ、変わってるけど 悪い人じゃないし・・ もし言い寄られたら、上手くかわして 」私は言った。
「 ええ!?言い寄る?マリオンやっぱ無理だよ、私 」
私もさ・・「 寂しいんだと思うよ・・ あのオヤジも 私達と同じチャネラーだし、見えない物が見えたり聞こえたりする人って
誰にも解ってもらえないから、孤独だよね 」私は言った。
「 それは・・ 分かるけど、何ていうか・・ 生理的に無理っていうか・・ 」ナアナは困惑していた。
「 言霊の為だよ!頑張れ!ナアナ、もしどうしてもダメだったら、オヤジにそう言えばいいよ 」私はナアナに言った。‥ 少し後ろめたかった
店で 客を見送った後、バックに戻るとまた着信が光った。ナアナからだ・・
「 マリオン、やっぱ私無理だわ!寺院の木の下で オヤジがいきなり大声で歌いだして・・
周りの人達にもジロジロ見られるし、私恥ずかしくて死にそうよ!もう帰りたい 」ナアナは泣きそうだった。
「 ナアナ、大丈夫?もう帰りましょうって、帰っちゃいなよ。はっきり言うんだよ 」私は言った。
・・・ 電話は切れていた。・・ナアナ頑張れ!心の中でつぶやいた。
風が吹いて・・ 岩塩ランプの灯りが揺れた。
人のエネルギーが、替わる所を見なさい。同じ人間でも・・ 突然 入れ替わります。風が変わるのと同じように・・
ウリエルの言葉を思い出した。
「 人のエネルギーが 入れ替わる・・ 」
「 すみません、予約お願いします 」若い女の客がやって来た。
「 5時15分から、ホットストーンセラピーをお願いできますか? 」
「 はい、5時15分から・・ ご予約ありがとうございます。ではお待ちしています 」私は言った。
515・・ 錬金に関わる数字だ
蝶になる前の蛹が、ドロドロになって1つの死を体験するように
何かが変わろうとしていた。
夜になって、ナアナからメールが来た。
「 あの後、帰りましょうって帰ったんだけど、またさっきオヤジがメールして来て・・ あなたを理解出来るのは私だけだから、また会いましょうって・・
もうしつこくて無理なんだけど、マリオン 」
「 ナアナ、気持ち悪いから止めて下さい!て返信して 」私はナアナに送った。
「 ええ?そんな事言ったら・・ 傷つくんじゃない?」
「 言わなきゃ・・ ずっと言って来るよ。ヤツは寂しいんだから・・ 」私は言った。
深夜、いきなり胸の苦しさに襲われた・・ 窓の閉まった 部屋の中に風が吹き荒れ
周りにある物を巻き上げていた。
「 何故?・・ 何故なんだ・・ 」孤独に咽ぶ男の声がした
私は頭痛と吐き気に襲われ・・ ベットの上でのた打ち回った。「 グワァァ・・!」
怒りと悲しみの混ざった・・ナディアの風が 私に襲いかかる
「 おまえの孤独は・・ 何処にある? 」私は言った。
風が強くなってきた・・
木立が大きくしなり ザワザワ・・音をたてる。
喫茶店から外に出ると、バサバサバサ!カラスが飛び立った。
「 女神島の カラスの神話は知っていますか? 」オヤジが言った。
「 はい、父から聞きました。女神がこの島に降臨した時 地上界はまだ真っ暗闇だったので、
天の遣いのヤタカラスが先に飛んで 女神の鎮座する場所を教えたという話です 」コミュウが答えた。
神話 寓話的な話を真実の話として聞く・・コミュウに初め出会った時に聞こえた言葉だ。
「 ヤタカラスは どんな暗い闇の中でもいち速く飛んで、行く先を導きます 」オヤジが言った。
「 どんなに見えない意識の闇の中も 概念に摑まらずに 」ナアナが言った。
「 では、皆さんで言霊を歌いましょう。・・風を感じる 良い場所がありますか? 」オヤジが言った。
「 女神島で一番美しい 聖木の下はどうでしょうか 」ナアナが提案した。
やっとだ・・ 私はほくそ笑んだ。
川を渡って、崖を登り・・ 聖木の下に着いた。
風が、私達の足元から巻き起こり 目の前に立つ大樹の枝を雄々しく揺さぶった。
ザワザワザワ・・ ザワザワザワ・・
「 気高く・・ 気高く・・ 」誰かが囁く
いきなりオヤジが歌い始めた。
半音階の物悲しい響きのメロディーを、鼻に抜けるような子音と 鳴いてるような母音を伸ばして繰り返し
イルカやクジラの鳴き声、まるで猫が鳴いているような歌だった。
「 黒猫・・ 」私は前世のウリエルを思い出した。
昔 森の中で、風の音・・ 木漏れ日の煌めき・・ 静かな湖の側で歌った
風が吹いて・・ 水を走らせる・・
子音は風で、母音は水
私達の身体の中を、ナディアが駆け巡る
紺碧の夜の帳が降りると、妖精達が囁く・・ 月光の下
あなたは行かねばならない
何処へ?
遥かな星を越えて、遠く・・
時の果てまで
「 白い倍音の 魔法使い 」いきなりオヤジが言った。
「 白い倍音の魔法使い・・ 歌って下さい 」
私は、目を閉じ・・ 前世の歌を、歌い始めた。
私は 魅惑するために力を与える
受容性を指揮しながら
輝きという 倍音の音とともに
私は 永遠の出力を確信し
スピリットの力に導かれる
輪廻という同じ時を回し
ダルマに向かって起動し始める
ゾディアック
同じ宇宙に 同じ時間はない
私は銀河の中心にいた。
青いスパークが起こり 気が付くと
静かな湖のほとり、森の小さな小屋の木の下 揺り椅子に腰かけていた。
鳥がさえずり、風が 木々の葉や草を揺らして通り過ぎて行く
光の中に遊ぶ、小さな女の子と黒猫を見ていた。
懐かしい・・ 幸せの陽だまりの中、これが永遠に続くと思っていた
あの女の子は 誰だ?
私はもう一度よく見ようとしたが、光の照り返しが眩しすぎてよく見えない・・
あの子は・・ 知っている。誰だっけ?
思い出そうとした瞬間、私の中の何かが拒むように・・ 頭痛と吐き気が襲った。
悲しみが沸き起こり・・ ガボガボガボ・・ 肺に水が流れ込み息が出来ない。頭上の揺れる水面に 人々の叫び声が聞こえた。
あの日、あの子は どうなったのだろう・・ 森に捨てられていた女の子、一緒に暮らしていた。
「 あの子は・・ 」視界が闇に包まれた死の瞬間、ナアナが現れた。
白い装束に身を包み、大きなライオン像の下 神輿に担がれていた。エジプトの時代
歓喜の群集に見送られ 彼女は遠い異国の地へ旅立って行った。
私の心は、抜けるような青い空と裏腹に 張り裂けそうな悲しみに包まれていた。
これは・・ 私の前世が体験した、マインドの旋律だ。愛する者との別離
私のナディアが奏でる、アイの歌
幸せの森 陽だまりの中、遊ぶ 小さな女の子は・・ あの前世のナアナだった。
~ 34 ~
着信が光った、ナアナからだ。
「 ねえ・・マリオン、私あの言霊の人に 一緒に寺院に行こうって誘われたんだけど・・ 」ナアナが言った。
出たな オヤジ・・ 「 え?何て言ったの、マリオン 」ナアナが聞き返した。
「 いや・・ 何でもない、言霊を教えてもらうんだ? 」私は言った。
「 うん、でも・・ 2人だけっていうのは、ちょっと抵抗があるんだけど・・ 」
「 大丈夫だよ、変わってるけど 悪い人じゃないし・・ もし言い寄られたら、上手くかわして 」私は言った。
「 ええ!?言い寄る?マリオンやっぱ無理だよ、私 」
私もさ・・「 寂しいんだと思うよ・・ あのオヤジも 私達と同じチャネラーだし、見えない物が見えたり聞こえたりする人って
誰にも解ってもらえないから、孤独だよね 」私は言った。
「 それは・・ 分かるけど、何ていうか・・ 生理的に無理っていうか・・ 」ナアナは困惑していた。
「 言霊の為だよ!頑張れ!ナアナ、もしどうしてもダメだったら、オヤジにそう言えばいいよ 」私はナアナに言った。‥ 少し後ろめたかった
店で 客を見送った後、バックに戻るとまた着信が光った。ナアナからだ・・
「 マリオン、やっぱ私無理だわ!寺院の木の下で オヤジがいきなり大声で歌いだして・・
周りの人達にもジロジロ見られるし、私恥ずかしくて死にそうよ!もう帰りたい 」ナアナは泣きそうだった。
「 ナアナ、大丈夫?もう帰りましょうって、帰っちゃいなよ。はっきり言うんだよ 」私は言った。
・・・ 電話は切れていた。・・ナアナ頑張れ!心の中でつぶやいた。
風が吹いて・・ 岩塩ランプの灯りが揺れた。
人のエネルギーが、替わる所を見なさい。同じ人間でも・・ 突然 入れ替わります。風が変わるのと同じように・・
ウリエルの言葉を思い出した。
「 人のエネルギーが 入れ替わる・・ 」
「 すみません、予約お願いします 」若い女の客がやって来た。
「 5時15分から、ホットストーンセラピーをお願いできますか? 」
「 はい、5時15分から・・ ご予約ありがとうございます。ではお待ちしています 」私は言った。
515・・ 錬金に関わる数字だ
蝶になる前の蛹が、ドロドロになって1つの死を体験するように
何かが変わろうとしていた。
夜になって、ナアナからメールが来た。
「 あの後、帰りましょうって帰ったんだけど、またさっきオヤジがメールして来て・・ あなたを理解出来るのは私だけだから、また会いましょうって・・
もうしつこくて無理なんだけど、マリオン 」
「 ナアナ、気持ち悪いから止めて下さい!て返信して 」私はナアナに送った。
「 ええ?そんな事言ったら・・ 傷つくんじゃない?」
「 言わなきゃ・・ ずっと言って来るよ。ヤツは寂しいんだから・・ 」私は言った。
深夜、いきなり胸の苦しさに襲われた・・ 窓の閉まった 部屋の中に風が吹き荒れ
周りにある物を巻き上げていた。
「 何故?・・ 何故なんだ・・ 」孤独に咽ぶ男の声がした
私は頭痛と吐き気に襲われ・・ ベットの上でのた打ち回った。「 グワァァ・・!」
怒りと悲しみの混ざった・・ナディアの風が 私に襲いかかる
「 おまえの孤独は・・ 何処にある? 」私は言った。