銀魂 −アインクラッド篇−
第十一訓「自分の知らないところでは色々な出来事が起こっている」
『銀魂』
・大江戸 かぶき町 万事屋銀ちゃん
日を跨ぐまであと一時間を切ったところに、またまた新たなる客人が万事屋へと訪れた。本日だけで一体何人目になるのか?と思うも新八は考えるのを止めた。今日一日で様々な出来事がありそれだけで相当疲労困憊なのだが、訪れる皆は共通して銀時の身を案じて来ているのだから疎かにすることはできない。
エリザベスの背後からひょっこりと現れた老人『平賀源外』はやれやれと言わんばかりに銀時及びなぜか銀時と一緒の布団で横になる土方の頭部に装着されたナーヴギアをまじまじと見つめて再度、ため息を吐いた。
「それで、源外さん。重要な事って一体どういう意味ですか?」
「銀ちゃんとトッシーのドリームがキャッチされたことに何かあるのかヨ?」
「まあ、そう慌てなさんな。まだこいつの解析は完璧じゃねぇ。たまが寄越したデータだけじゃ不備があってだな。こうして重い腰を上げてわざわざ実機を見に来てやったんだ。そしたらお役人共が居て出ように出られなくて結局この時間まで待つ羽目になっちまってよ。俺にもちょいと時間をくれ」
源外は銀時の頭部のナーヴギアに電動ドライバーを入れ壊さない程度に解体を進める。下手に解体をし続ければ当初のたまの警告通り、銀時の頭脳がレンチンされてしまうため、慎重に事を進めていた。
「新八様、神楽様。あたたかいお茶を入れました。どうぞお飲みください」
「ありがとうございます。たまさん。そういえば姉上達は?」
「お妙さん方は下で既に就寝されています。新八様も神楽様もお疲れのようです。少し仮眠をしてはいかがですか?」
「銀ちゃんたち頑張ってるアル!私達も出来る限り傍にいたいネ!」
「そうですか・・・。ただ、休養を取る事も大事です。もし辛くなったらいつでも私に話しかけてください。すぐに準備致します」
「エリザベス。桂さんもあちらのゲームの世界に行ってるんだよね?いつから始めたの?」
『この男より一週間は前だと思われる。』
『おそらくだが、桂さんはまだ自分が囚われの身だと気が付いていないだろう』
『俺はこれから徹夜でプレイするから絶対に話しかけるなよ!と、言っていたぐらいだからな』
攘夷活動サボって何やってんだあの人。と新八は思いながら、たまから頂いたお茶を少し飲む。それと同時に源外の解析作業が終了したのだろうか、解体をしたパーツを再度装着して元の状態に直していた。
「まったく驚いたな。思っていた以上に高度な技術が使われてやがる」
「それで源外さん。結果は?」
「あいつらやそいつの言う通りだ。こちらからは何もすることができねぇ。下手にちょせば銀の字の頭は無くなったも同じ。打つ手無しだな」
「そんな・・・」
「まぁ気ぃ落とすんじゃねぇ!銀の字らがあちらとやらで頑張れば何をせずとも起きるんだ。あと、問題はこいつだな・・・」
源外は土方を見る―――。
そういえば、忘れかけていたが重要な事をまだ聞いていない。
一体どういう意味なのだろうか?そんな新八を察した源外は口髭を触りながら2人に話し始めた。
「お前ら、他の星とかに行ったことあるか?」
「いえ、僕は無いですけど」
「私は元々、別の星にいたネ!」
「だったら話は早い。こいつらが今、どのような状況にいるかはわかんねぇが、こちらからあちらへと移動する間が一番の問題ってわけよ。なんだが・・・」
源外は当たり前のように説明を始めるが、新八と神楽にはさっぱりその言葉を理解できなかった。源外はやれやれと頭をかきながら再度説明を始める。
「いいか?お前さんらが地球から他の星に旅行する。その移動に発生する時間はおおよそ6時間と過程する。地球を出たのは昼。そして目的の星に到着する。しかし到着した時間は夜の6時ってわけじゃねぇ。何故だかわかるか?」
「えっと・・・すいません、ちょっと・・・」
「まあ簡潔に言うとだな。その星々によって進んでいる『時間』が違うからだ。・・・困ったな。俺も説明が上手い方じゃねぇ。お前、わかりやすく説明できるか?」
『駄目だ。説明をするにはフリップが足りない』
「それでは、エリザベス様及び源外様に変わり私が説明させて頂きます。なお、説明のレベルに関しては新八様が理解できるところまで引き下げます。まず、バックトゥザフューチャーを思い出しましょう。パート2でマーティはドクに連れられて改造したデロリアンに乗り未来へ行くとき―――」
「いや、バックトゥザフューチャーで例えなくても良いですから!余計に訳が分からなくなりますから!」
「私パート2まだ見てないアル!マーティはドクに連れられてどこに何をしに行ったノ!?一体何年後のヒルバレーに着いたアルか!?」
「お前はどこに食いついてるんだァァァッ!!・・・たまさん、普通で良いです。普通に説明をお願いします」
神楽とエリザベスは話そっちのけで「パート3は傑作」だの「時間移動するには何ジゴワット必要だったっけ」だのバックトゥザフューチャー談義を初めた。新八はそんな2人に構うことなく再度、たまに説明を求めた。
「かしこまりました。それではバックトゥザフューチャーでの例えではなく私達の今の状況で例えてみましょう。今、新八様が過ごしているこの世界と銀時様がいる世界ではそれぞれ独立した時間が進んでいます。私達が立っているこの場所では既に深夜ですがこの半球の真下に住む方々の地域では正午を迎えようとしています。このように、住む場所によってそれぞれが独立した『世界』の中で皆、生活しているのです。これを銀時様の例で説明すると、銀時様がここを旅立たれたのが15時過ぎ、しかしあちらの世界では朝の8時に到着した可能性もありますし夜の7時ということもあり得るのです」
「なんとなくわかってきました。・・・神楽ちゃん?」
神楽には難解だったためか体育座りをしながらいびきをかいて寝ている。新八は神楽を起こさないよう身体を持ち上げソファに寝かせ、毛布を上からかけてあげた。
「お待たせしました。続きをお願いします」
「かしこまりました。先程、こちらから旅立ってあちらに到着する時刻の説明をさせて頂きましたが、ここで一つ問題があります。その移動にどれだけの時間が発生するのかが不明なのです」
「え、何故ですか?」
「単純に、質量を持った物体が別の地点へ移動するときに発生する時間計算は寺子屋に通う学童でも学ぶレベルなのでいくらでも計算できますが、銀時様は『次元』を移動しています。他次元を移動すること。つまり、どの次元からどの次元に移動したのか。その次元のどこに到着するのか。データの転送にどれだけの時間が発生していたのか。次元レベルでの移動となると大雑把に言えばその世界の『過去』もくは『未来』に到達することも考えられます。おまけに質量をもった物体ではなく使用者本人の意思のみの移動をされているので、簡単に結論を出すことは不可能です」
ドラ〇もん第1話でセ〇シ君が似たような説明を気がしていたが、わかりそうでいまいち理解ができない。そんな新八を察したのか、たまは結論のみ新八に伝えた。
「先程土方様が次元移動を行いましたが、必ずしも銀時様が活動をしている時間軸にたどり着くとは考えらえません。―――というか、『ありえません』」
作品名:銀魂 −アインクラッド篇− 作家名:a-o-w