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銀魂 −アインクラッド篇−

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第十訓「漆黒の剣と白銀の剣」




『ソードアート・オンライン』
・第七十五層 コリニア コロシアム内控室

闘技場の控室はその大きさに対し小さな部屋だった。
既に満席になっているのか控室にも歓声がうねりながら届いてくる。
キリトとアスナが二人きりになると、同時に大きなため息をして自分たちの後方に振り返る。
―――そこには、ヒースクリフが昨晩と同じ状態で横たわっていた。
あの後、銀時を含めた3人は誰も見つからないようにヒースクリフの身体をエギルの店の銀時の部屋まで運び、とりあえずエギルとそこに居合わせたクラインに状況を説明。銀時が無理やり飲ませた睡眠薬・極の効果を打ち消すために色々な方法を試行錯誤するも全て効果は無く、ただ時間だけが過ぎて行った。
明朝、過労と寝不足のためか5人は思考が低下しており、クラインが「もうこの際、将軍殿が団長のコスプレをしてキリトと戦えばいいんじゃねぇか?」という馬鹿丸出しの提案をするも、4人は「それだ!」と満場一致で決定し、エギルは自身の伝手をフル活用していかにも聖騎士ヒースクリフっぽいコスチューム一式を用意したのだ。ちなみにアスナはその時間を利用してギルド内でヒースクリフがどこで何をしているのか辻褄合わせを行っていた。
そして時刻は正午。ついに、決闘―デュエル―の開始時刻を迎える事となったのだ。

「団長が起きるまであと2時間ちょっと。いい?キリト君。さっきも打ち合わせたけどもう一度説明するわね。決闘―デュエル―は初撃決着モード。ワンヒット勝負よ。これが幸いしてどちらかがクリティカルを受ければその時点で勝敗は着くわ。長引かせれば長引かせるほどお互いボロが出始める。ギンさんにも伝えたけど開始早々にキリト君がギンさんの懐に入ってギンさんがそれをガード。そのガードをした瞬間に君の二刀流でギンさんに一撃を与え、勝負はそれで終了。いいわね?」
「ヒースクリフが起きたときの辻褄合わせは?」
「団長は泥酔。それが抜けきれず勝負をして再び気絶。こんなとこで良いわよ」
「だ、大丈夫か?それ」

遠雷のような歓声に混じって、闘技場のほうから試合開始を告げるアナウンスが響いてくる。キリトは背中に交差して吊った二本の剣を同時にすこし抜き、チンと音を立てて鞘に収め、闘技場へと歩き始めた。
闘技場の中心部に立つと、反対側の控え室から聖騎士ヒースクリフのコスプレをした銀時がやってくる。見た目は完全に本人とそっくりだ。近づかなければバレる心配は無い。
「すぅ〜まなかったなっ、キぃリトくぅぅぅん・・・ぶるぁぁ・・・・ま〜さかこ〜んなことになるとわなぁ・・・」
「・・・本当に、こんなことになるとは思わなかったよ・・・なあ、・・・・・・・『ギンさん』」
「こ〜れ以上誤魔化しきかねぇからよっ!おじさんほ〜んきでいくからよぉ・・・・よろしくぅ〜ぃ・・・」
「団長、そんな下を巻いたような喋り方しないから。もっと普通で良いから」
何故か、某ア〇ゴさんや某セ〇で知られる若〇さんボイスで話す銀時にキリトは軽くツッコむ。出てきた瞬間にバレてしまわないか内心ハラハラしていたが、観客席からずいぶんと距離があるものだったのでその姿を理由にざわついてはいなかった。ちなみに銀時のステータス一式についてはキリトとエギルが持ち得る知識によってなんとか『ヒースクリフ』と同じく見えるように調整している。こちらも時間の問題だが。
「大体、どこのお偉いさんも若〇さんだろ?こうやって若〇さんっぽく喋ればバレることはねぇよ」
「いや、どこのお偉いさんも若〇さんってわけじゃないから。とりあえず団長は若〇さんじゃないから。ほら、始めるよ」

キリトは意識を戦闘モードに切り替え、十メートルほどの距離まで下がり、右手を掲げた。出現したメニューウインドウに視線を落とさず操作する。瞬時にキリトの前にデュエルメッセージが出現した。もちろん受諾。それと同時にカウントダウンが始まった。

そんな中、観客席側ではいよいよ決闘―デュエル―が始まるものなので少しずつ歓声が減ってきている。アスナはリズベットやシリカのいる席まで移動をしていた。
「おっそーい!アスナどこにいってたのよ!」
「キリト君と最終調整をしていて遅くなっちゃったのよ。もう始まる?」
「始まりますよ!・・・・あれ、あの人ってどことな〜くおじさんに似てません?ヒースクリフさんってあまり見た事ないですけど、おじさんにそっくりなんですね!」
「ッ!・・・そ、そうね・・シリカちゃんはとっても目が良いのね!あはは・・・」
「どうしたの?アスナ・・・おじさんと言えば、あの男はどこに行ったのよ!昨日の夜からずっと姿をみてないけど!?」
「えっとその・・・たぶんどこかで死闘でも繰り広げているんじゃない!?」

―――間違っても、目の前にいるだなんて言えるわけがない。
この件を知っているのは自分、そして目の前で顔を青ざめながら正座をしているエギルとクラインのみだ。

「全く・・・キリトの晴れ舞台だっていうのに、こういう時に限っていないんだから。昨日もギンさんに睡眠薬さえ飲まされなかったら前祝もしてあげられたのになー」
「えっ・・・ギンさんが2人に直接睡眠薬を飲ませたの?」
「そーなのよ!まあ、私達の確認不足ってのもあったけどさ。大体、キリトが私達2人にどーしてもって頼み込んできたときから不幸の始まりよね」
「結局、報酬はありませんでしたからね。残念です・・・」
「シリカちゃん、なんでキリト君は2人にお願いしてきたの?・・・私、何も聞いてなくて」
「えっ、そうだったんですか?キリトさんは『アスナが他の男と一緒に何かをしている姿を絶対見たくない』って言って私達に頼んできたんですよ!」
「えっ・・・・」

―――それはつまり・・・『嫉妬』では?

他愛もない2人との会話を経て、アスナは下を向き、目の前でこれから始まる決闘を忘れたかのように自分の身体を抱きかかえ感情が抑えきれなかったのか両足をバタバタと音を鳴らして少しだけ笑ってしまった。

場面は再び戻り、闘技場の中心。
キリトの全身の血流が早まっていく。
戦闘を求める衝動に掛けた手綱をいっぱいに引き絞る。
背中から二振りの愛剣を同時に抜き放ち、一気に間合いを詰める準備を整える。

いくら台本通りだとしても、手は抜けられない―――。

銀時は気だるそうに大きな盾の裏から細身の長剣を抜き、構える。


その時―――『DUEL』の文字が閃いた。

最初に動いたキリトは沈み込んだ体勢から一気に飛び出し、地面ギリギリを滑空するように突き進む。
銀時の直前でくるりと体を捻り、右手の剣を左斜め下から叩きつける。その剣は銀時の持つハリボテの盾でしっかりとガードされた。
(よし、ここまでは打合せ通りっ!)
キリトの脳内ではこの勢いを殺すことなく左の剣を盾の内部へと滑り込ませ、銀時の腹部に一太刀、クリティカルヒットを与え試合終了とさせる。・・・そのような道筋を建てていた。
それは、キリトに限らずアスナも一緒だった。我に返ったアスナはキリトの一瞬の動きも見逃さず、よしっ、と小声を出しながら小さくガッツポーズをしていた。
(ごめん、ギンさん・・・だけどっ、このまま終わらせてあげるからっ!)