君のいる場所~第一章~【二話】
街から外れた道_
三人を乗せた馬が、道を駆け抜ける。
この道は、城につかえている者だけが知る秘密の道。
誰にも見つからない所で、安全に城と街を行き来することが出来る。
少し山は登るが、城へ帰るには便利な道だ。
そこを通っている途中。
会話もないまま、ただ馬の足音だけが響いている。
アリサは、まだ怒っているのかを確認しているのか、度々ルイの顔を見上げては不安な表情を見せる。
「な、なぁルイ」
沈黙が苦しくなったのか、カナデがルイに話しかけた。
「何です?」
ルイは前を向いたまま返事をする。
「さっきあそこで、何してたんだ?」
それはアリサも持っていた疑問のようで、横目でルイの顔を見た。
「…あそこは、チョコレート専門店です。時々出るおやつはいつもチョコレート料理でしょう?あれは、いつもここからしいれているのです。城からも近いですしかなり美味なもの。国王様も大変気に入られています。今日はチョコレートの一ヶ月分のお金とお礼を持っていったのです」
淡々と説明したルイ。
カナデは、時々出るおやつを楽しみにしていた。
そして毎回出るのは凄く美味しいチョコを使ったデザート。
一度そのままで食べたことがあり、とても美味しかったことをカナデはよく覚えていた。
そしてそれを作っていたのがさっき見たあの店。
名残惜しそうに後ろをカナデが見る。
それに気付いていながらも、ルイは戻ることはしなかった。
城の裏門前_
「さぁ、着きました」
ルイがそう呟き、二人を馬から下ろす。
「貴方たちは出てきたところから入ってください」
そう指示すると、ルイはさっさと城の中に入って行ってしまった。
「やっぱルイって、分からないな。何考えてるか」
「そう、ですね…。妹である私にも、よく分かりません」
アリサは少し悲しい顔をしたが、すぐにカナデに笑顔をむけた。
「でも私は、お兄様が大好きです!」
カナデは、アリサのその言葉が嘘ではないと判断し、同じように笑顔をむける。
「あぁ、オレも…」
そのとき、一瞬強く風が吹いた。
作品名:君のいる場所~第一章~【二話】 作家名:まおな