小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

スパイスの必要性について考えてみた

INDEX|1ページ/1ページ|

 
「あざまーす」
 最後の客の会計を終え、店のドアを閉めてcloseの札を出す。よし、これで俺の仕事は完了した。
「やっべ、今日も疲れたわー」
 ふいー、と行儀悪く床に座り込んで休憩。途端、後頭部をパシッとはたかれた。
「おい、まだ仕事残ってんだろ」
 俺と同じ時間帯に仕事をすることの多いバイト仲間だ。
「わりーわりー。疲れちまってさぁ」
 で、何すりゃいいの? と問いかけると、相手は手に持つほうきをぐっと押し付けてきた。
「掃除手伝え。……あー、あと、サボるんなら店長に見つかんないようにやれよ? この前みたいに怒られんの、もう嫌だかんな」
「……ん? あの時、お前も巻き込んだっけ?」
「いや……。そういうんじゃなくて、お前が怒られてるとこ見んのも、ふてくされてるの見んのも、嫌なんだよ。何つーか、まぁ、そういうことだ」
「どういうことだよ。言葉になってねぇじゃん!」
 軽く噴き出した。
「とりあえず、ぱーっとやってさっさと帰るとしますか!」
「……おう」
 店の後片付け、掃除、ゴミ捨て、と一通り終えた頃、店長が奥から顔を出した。
「あー、大体終わってるね? じゃ、帰る前にもう一仕事。これ、窓に張りつけといて」
 ぽいっとポスターを二つ手渡された。
「じゃ、私は事務仕事があるので」
 と、また奥の事務室(ただパソコンが置いてあるだけだが)に戻っていった。
 丸まっているポスターを広げ、中身を確認する。
「あぁ、来週の新商品の宣伝? デザート系中心だなあ」
「っぽいな。ふぅん」
 と、ポスターをしげしげと眺めている。
「お前って甘いもの好きだっけ?」
「嫌いじゃない。積極的には食べないけどな」
「へー。あっ、俺な、ケーキの中でも唯一チーズケーキだけ好きなんだよ! で、ちょうど十日後、誕生日なんだよなぁ」
「……おごれと?」
「くれるんだったらもらう!」
「あーそうか。うん分かった。考えとく」
「何か三段活用っぽい言い回しだな!?」
「……どこら辺が? って、そんなことより、ポスター。さっさと貼って帰るぞ」
「ういうーい」
 そして、一枚目を張ってから気付く。
「……なぁ、これ。このポスターの上に貼るんだよな?」
 二枚目を手に持ちつつ、ぽつりと尋ねれば、
「あぁ。そうだな……」
 どうにもこうにも手の届かない場所に貼らなければいけないという事態となっていた。
 一枚目の貼り方が悪かった。もうはがせないし。
「乗って平気そうなものもねーしなぁ。……ん、や、あれじゃね、肩車すればいいんじゃね?」
「どこからその発想が浮かんでくる?」
「だって、手っ取り早いし。たぶん楽だし。よーし、物は試しだ! ほら!」
 と、その場にかがみこむ。
「お前が下で、大丈夫なのか……?」
「お前よりは力強いっつの! いいから乗れ! 倒れたりしねぇから!」
「ったく、ちょっと探せばいいだけじゃないか……。乗るぞ」
「おう!」
 肩にずん、と重みがかかったのを感じ、「立つぞ」と声をかけてからガラス伝いに立ち上がる。
「う、お、っとっ」
「わ、ちゃんとバランス取れって!」
 後ろに倒れそうになり、無理やり重心を前に倒す。
「あーもう、危ねぇな。とりあえず、貼れ、貼れ。地味に重いから」
「ちょっと待て。…………ん、貼れたぞ」
「んじゃあ、ずりずりずりっと」
 肩の上の重みをさっさとどかし、軽くなった体で立ち上がる。
「ミッションコンプリート! ってな?」
 俺のガッツポーズに目の前の相手はふっと笑みをこぼした。
「帰るか」
「そーだなー。あ、お前今度のシフトいつ?」
「明日の午後六時からラストまで」
「やー、お疲れさまです。俺土曜まで休みだから」
「そうか、良かったな」
 と、こっちを一瞥もせずに返答を返される。いつものことだ。
 まぁ、そんな何でもない日常を一番好む俺なんだけど。こいつの性格や態度なんかが変わったりしたら、心臓に悪いしな。たぶん。
 あー、でも、そんなのも一回くらいなら試してみたいかもしんねぇ、と独り言ちる俺だった。