傀儡 (くぐつ)
モノクロームの世界
研ぎ澄まされた神経
鮮明な思考
息を吹き返す僕
僕だけの世界
霞む景色
街から消えゆく鼓動
聞こえるは僕の心音のみ
拍動に合わせて蠢く街
ゆっくりと僕のペースで歩く
霞んで同化したものには用はない
好きにさせてくれ
これは僕の世界なのだから
望み通りに創れる世界
何もかもが僕の色に染まる
虚無しかないけれど
だが漆黒ではない
霞んだグレー
不意に聞こえる足音
また現れたか
赤い服の君
誰なんだい
悠然と微笑む君
僕の仲間なのかい
君の存在だけは謎でしかない
僕は他者を飲み込む者
君は対話者かい
真逆の世界から来た使者なのかい
いつも微笑んでいるだけだけど
君の周りには光がない
輪郭もはっきりとしない
僕の世界を壊す者ではないようだね
染まる者でもないようだけれど
君を消すような真似はしないよ
面白いからね
干渉するようでしない君
僕の世界にはそぐわないけれど悪くはない
過酷な状況に咲く花を手折る趣味はないよ
今日は趣旨を変えようか
ここはボールホール
音楽を鳴らそう
一曲どうだい
酒も奢るよ
僕の手を取る判然としない君
今日は何者なのか探らせてもらうよ
覚悟はいいかい
ダンスは戦いだ
僕の誘導に乗る君
一挙手一投足に意思を乗せる
だが探りに動じた様子はない
どうやら意思はないようだ
色があるのは表だけかい
悪くはないけれど楽しくはない
邪魔をしないとはそういうコトかい
突き放つ僕
君も用はないよ
今度からは気にも留めないから
いつも通りそのままでいてくれ
鳴り響く鐘
訪れる終幕
僕だけの世界の小休憩
極彩色の世界へと引き戻される
最悪なほどの目覚まし時計
また訪れる慌ただしい日常
鈍った思考
僕が僕ではない浮遊感
自由にならない手足
僕は操り人形
この世の道化
赤い服のさらし者