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アナザーワールドへようこそっ!  第一章  【005】

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  【005】



 俺たちは今、「アナザーワールド」の中央に位置する大陸にいる。

 そして、「王立中央魔法アカデミー」や、この世界の情報収集も兼ねて「ビュッセルドルフ」という町にやって来た。



「あそこ、か」

 俺たちは、ビュッセルドルフの町の人から「旅人の宿泊所などを手配している」という「町の教会」の話を聞いて、早速やってきた。

「は、隼人……! とりあえずご飯よ、は、話はそれから!」

 見ると、シーナの様子が、変だった。

「お、おい、どうしたシーナ? 何で、そんな興奮状態なんだよ?」
「だ、だって……わたし『食事』って初めてだから?」
「えっ?」

 一瞬、シーナの言っていることが理解できなかった。

「言ったろ? わ、わたしは今、『肉体を持つ人間』だから『空腹を感じる』と……。つ、つまり、逆に言えば、これまでは『肉体』を持たない存在だったから『空腹』も経験したことがない……! だから『食事』なんてしたことがないということだ。も、もしも、このわたしの『空腹状態』がお前から見て『異常』だと見えるのであれば、まだ、わたしがこの『肉体を持つ人間』という『器』をうまくコントロールできていないことになるが……は、隼人の反応を見る限り、ちょっと『異常』……なのか?」

 俺は、少し迷ったがそのまま思ったことを伝えた。

「ま、まあな。人間は『空腹』になってもそこまで興奮状態にはならないからな……」
「そ、そうか……わかった。な、なら、何とか、ガマンして……みる」

 そう言うと、シーナは「深呼吸」を数回行った。すると、さっきよりは少し落ち着きを取り戻したようだった。

「ふぅ……と、とりあえず抑えることができた。し、しかし、すごいな……この『食欲』というものは。すごく心を乱されたぞ」
「ま、まあな……『食欲』は人間の持つ『欲』の中でも『上位ランカー』だからな」
「そ、そうなのか?……に、『人間』は大変だな~」

……まあ、考えてみりゃそうかもな。

 シーナは元々は『人間』じゃない。そんな経験したことのない『食事を摂る』という行為をするには『お腹が空く』という『反応』が出るわけで……そして、それが『初めての経験』なら、そのまま『食事を摂りたい』という『人間本来の本能的な欲求』がストレートに出る。それが、さっきの「興奮状態」ということなのだろう。
 そう考えると、この世界(アナザーワールド)で生活するっていうのは、俺以上にシーナは「負担が大きい」のかもしれないな……まあ、俺もできる範囲で、シーナの負担を軽くするよう気をつけなきゃいけな…………、

「何、一人でブツブツ言ってるんですか? キモイんですけど? て言うか、早く中に入りましょう」
「…………」

『前言』を『撤回』することを、ここに宣言します。


 そうして、俺たちは「教会」の中に入っていった。


「す……すごいな」
「ほぇえ~……」

 教会の中は、天井が高く、また至るところに、この世界の「動物?」や「英雄?」のような彫刻が並んでいた。

 何だか、地球の「教会」と似たような豪華な建物だった。


「こんにちは。あなたたちは、旅の者ですか?」


 声は、奥の方から聴こえた。

 そこに目を向けると、「白い修道服っぽい格好をした男」がいて、その男は俺たちに近づいてきた。

「あ、すみません、勝手にお邪魔してしまって……。わたしたちは旅の者で、町に入ったときに出会ったご婦人に、この教会のことを教えられまして……それで、尋ねて参りました」

 と、シーナがさっきと同じように流暢に挨拶をした。

「そうでしたか。ということは、もしかしたら『宿』をお探しですか?」
「あ、はい。そ、それと…………食事のほうも……聞いた、の……ですが……」

 シーナは、少し言いづらそうにモジモジしながら尋ねる。

 うーむ、かわいくて、けしからん。

「ああ……ふふ、大丈夫ですよ、気を使わなくても。教会はあなたたちのような『旅人』にとっての『休憩所』の意味合いもあるのですから」
「あ、ありがとうございますっ!」
「それでは、早速、食事のほうご用意いたしますね。話は、その後にでも……」
「す、すみません。助かります」
「いえいえ……では、ごゆっくり」

 そう言うと、神父はまた奥へと戻って行った。

 俺は、「この神父さん、すごく気が利く人だな~」と、普通に感心しながら二人の会話を横で見ていた。

「やったーっ! こんなすぐに食事にありつけるだなんて……わたしたち運がいいな、隼人っ!」
「本当だな。神父さんもすごく人が良さそうな感じだし、食事もすぐにありつけたし、幸先、良いかもな」
「ううん、『かも』じゃない、絶対だよっ! うー……何だか興奮してきたーーーっ!」

 興奮はしなくていいですよ、シーナさん。

 といったわけで、俺たちはこの後、奥の「修道室」に呼ばれて、食事をいただいた。



「ふー食った、食った……」

 俺たちは、教会が用意してくれた「パン」と「スープ」と「パスタのようなもの」を頂いた。

 面白かったのが、見た目も、味も、「地球で食べてたもの」とすごく似ていた。

「ここは本当に異世界なのか?」と、勘違いしてしまうくらいだったが、そんな勘違いを見せると、シーナの「頬つね攻撃」が来るので、そんな気持ちはすぐにかき消した。

「は、隼人……」
「んっ? どうした、シーナ?」

 先ほどまで、一切口を開かず、一心不乱に食事をしていたシーナが口を開いた。


「し、『食事』って…………『食事』って、素晴らしいなっ!!」


 シーナは、目を輝かせ、満面の笑みを浮かべて、力強く宣言した。

 まあ、シーナのその反応は、大袈裟でも何でもないんだろう。なんせ、シーナにとっては、今回の食事は「人間になって、初めての食事」だっただろうからな……。

「お、おう。まあ、な」
「なんだ? お前のその薄い反応は?」
「いや、まあ、『食事』は『人間』にとって『欠かせない生命活動のひとつ』だからな。しかも、食事は『一日三回』摂るもんだ」
「い、一日に三回……だとっ?! 一日に三回も食事を摂るのか?」
「まあな……。だから、食事のときに毎回、毎回感動してたら疲れるぞ」
「そ、そうか……うむ、わかった。それにしても……人間って素晴らしいなっ!」
「そ、そうか……」

 ご飯食べる前は『人間って大変だな……』って言ってた奴がこうも変わるか。

 まあ、シーナだしな……こんなもんか。

 そうして、二人で談笑していると、裏からさっきの神父さんが現れた。

「食事は、お気に召しましたか?」

「あ、神父様……。は、はい、とてもおいしかったです。ありがとうございました!」
「すごくおいしかったです。ありがとうございます」

 俺たちは神父に向かって深々と頭を下げた。

「そ、そんな、やめてください。あ、頭を上げてください。とりあえずお口にあったようでよかったです。そう言えば自己紹介がまだでしたね……私の名は『カールトン』。教会(ここ)では、『カールトン神父』と呼ばれています」

 と、カールトン神父は、さわやかな笑顔を振りまいて自己紹介をした。