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アナザーワールドへようこそっ!  第一章  【004】

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【004】



――そして、シーナの説明はつづく。


「とりあえず、今、わたしたちは『人間族のいる中央大陸』にいるらしい。だから、まあ、何かに襲われるということもないだろう」

 と、シーナ。

「確かに、他の種族のいる大陸だったらちょっとシャレにならなかったかもな。でも、まあ、人間にだっていろんな奴がいるから、そう安心もできないけどな」
「そんなことお前に言われなくても充分知ってるさ……『人間の怖さ』は、な」
「…………?」


 今のシーナの言い方に、若干の「含み」を感じたが……ここではスルーしておいた。

 何となくだが、今はそんな話はしないほうがいいと思ったからだ。


「おおっ! 隼人! ここから約10kmくらい先に『町』があるらしいぞっ!」

 と、『メモ帳らしきもの』から新たな情報を発見したらしく、すぐにテンションの高いシーナに戻った。

「町?」
「ああ、町だ! まずはここで情報収集と行こうっ! お腹も減ったし!」
「えっ? お前、ご飯食べるの?」
「はっ? 当たり前だろ? どうしてそんなことを聞く?」
「い、いや、だって、お前『人間』じゃないだろ?」
「はっ? 何を言う? わたしは『人間』だぞ?」
「えっ? そうなの? だって、お前……『指導者(ガイド)』っていう、何ていうか、その、『神様の使い』みたいなもんじゃないの?」
「まあ……『神様の使い』って言うのは『理解的』には間違ってないが、今のわたしは『肉体を持った人間』だからな。お腹も空くし、空けばご飯も食べたくなる」
「へー、そうなんだ」

 なるほど。

……何となくだが、納得した。

「ところで……」
「んっ?」
「お前、わたしのことを『神様の使い』だって思っていたのなら、もう少し、敬う心を持てっ!」
「…………」
「お、おいっ! 全力で無視すんな、こらーーっ!」

 と、シーナは調子に乗ったらしく、俺に、『やいのやいの』と文句を垂れてきたが全力でスルーした。

 そして、文句が途切れたところで、

「……ところでシーナ?」
「んっ? なんだ~?」

 素晴らしい「ど忘れスキル」が発動した。

「町に行って情報収集するのはいいが、寝泊りするトコとかどうすんだ? お金みたいなもの持ってんのか、お前?」
「んー? お金ー? そんなものないぞー」
「ええー? じゃあ、町に行って情報収集した後は野宿ってこと?」

 どうやら、俺たちは「異世界」に降りた途端、「ホームレス」からのスタートらしい。

…………マジ?

「ふふ……そう思うだろ? だがな、隼人……驚くなかれっ! どうやらこの世界には、旅人のために無料で貸している『宿泊施設』なるものがあるらしいぞ」

 と、さらに『メモ帳らしきもの』から新情報を入手したシーナさん。

「……無料?」


――人間は「無料」という言葉に弱い。


「ああ。しかも、しかも……『一食付き』らしいっ!!」
「おおっ!!」

 俺とシーナは目を輝かせて、大いにはしゃいでいた。

「一文無し」で「空腹」な二人にとって、その「無料」「一食付き」という響きはあまりにも思考停止させるほどの威力があった。

 しかし、はしゃいでいる二人には申し訳ないが……ここで現実をひとつ。


 いずれにしても「ホームレス」には変わりないぞ、お前たち。


 人間とは「醜い生き物」である。

 そんな、「現実」に気づかないまま、「一文無しの腹ペコホームレスコンビ」は、一路、町へと向かった。



「おおっ! 隼人! 見えたぞ、町だっ!」

 シーナは、目を輝かせて「早く、早く~」と俺の手を引っ張ってくる

 うーむ、かわいい。

「わ、わかったよ。わかったから、そう急かすなって……」

 すると、ちょうど町の入口に入ったところに「誰かの銅像(戦士?)」と「この町の名前が掘られた石碑」があった。


『この町を救った英雄アポロニア に捧ぐ  ビュッセルドルフの町』


「何? 英雄アポロニアって?」
「さあ?『メモ帳』には載ってないな」
「あ、そう……て言うか、おい! ちょっと待て。その『メモ帳らしきもの』って、名称、そのまま『メモ帳』なの?」
「? どっからどう見ても『メモ帳』だろ?」
「…………」

 どうやら『メモ帳』が公式見解だそうです。

『この世界の取扱説明書』とか言ってたから、もっと大層な名前かと思ったのに……そのままかよ。


 町の入口で俺たちがそんな会話をしていると、後ろから声をかけられた。


「あら? あなたたち見ない顔ね? 旅の人?」

 振り向くと、「そうそう、いかにも『良いお母さん』て、そんな感じ!」というような「いかにも」な、おばさんが立っていた。

「は、はい、そうなんです。ちょうど今、ここに着いたところなんですけど、この辺のこと、よく知らなくて……」

「!?」

 びっくりした!

 あ、あの、シーナが……「マトモ」に、しかも「上品」に対応している。

 二人のときは、あんなに「おバカ」なのに。

 俺は、「マトモに、上品に」しゃべるシーナを見て、ちょっぴり見直した。

「あら、そうなの? ようこそ、ビュッセルドルフへ。それじゃあ、まずはこの町の教会に行きなさい。そこに行けばいろいろと旅の人たち向けの情報とか、あと、宿泊所とか案内してくれると思うから」

 と、おばさんは笑顔でシーナと俺にいろいろと教えてくれた。

「ありがとうございます。とても助かりましたっ!」
「いえいえ、どういたしまして。それじゃあ、ビュッセルドルフの町を楽しんでね」
「はいっ!」

 そう言うと、おばさんは手を振りながら、人込みのほうへと去っていった。

「……おい、隼人」
「んっ?」


 ぎゅうううううーーーー。


 シーナの、いきなりの「頬つね」。

「い、痛ひ、痛ひ……な、なんらよ?」
「お前も少しは会話に参加しろ! わたしばかりに押し付けてラクしようなんて10万年早いぞっ!」
「ち、違う、ひがうって……お前の、か、会話力に、驚いて、いひゃんらよ……!」

 と、俺は、心で思ったことをそのままをシーナに言った。

「えっ?」

 すると、シーナが「頬つね」をやめ、顔を赤らみながら、腕組みの格好になり、

「ま、まあな。あれくらい、た、大したこと無いぞ、ふんっ!」

 どうやら照れてらっしゃるようでした。

「ま、まあ、お前はあまり、そういうコミュニケーション的なことは苦手そうだから、しょうがないから、だから、だから、わたしがそこは何とかしてやろう。まったくしょうがない奴だな、隼人は……」
「お、おう……」

 何となく、「シーナの扱い方」がわかるようになりました。


 そんなこんなで、俺たちは「町の教会」へと向かった。