アナザーワールドへようこそっ! 第一章 【002】
【002】
「えーっと……まず、お前はこの『異世界』……『アナザーワールド』で『自分が死んだ原因を思い出す』のが課題だ」
うん。
知ってる。
それ以外の情報をよろしく。
「あとはーー……」
と言うと、指導者(ガイド)のシーナは、メモ帳みたいなものを広げて、ゆっくりと確認しながら続けた。
「……あっ! あと隼人、お前は、このアナザーワールドで『学校に行って卒業すること』も課題らしいぞっ!」
「えっ? が、学校? 卒業?」
何、その『新情報』。
て言うか、『課題』ひとつだけじゃないの?
「どうして、わざわざこんな『異世界』に来て、学校なんて行く必要があるんだ?」
「知らん。わたしに聞いても何も出てこないことは『周知の事実』だろ?」
まあ、確かに。
て言うか、それ、自分で言っちゃう?
「まあ、とにかく、ここにそう書いてある以上、それは『決定事項』ということだ、いいな?」
「……わかってるよ」
今の俺に「拒否権」なんて無いことくらい、わかってるさ。
「それで? 他に課題はまだあるのか?」
「えーっと…………いや、課題はこの『2つ』で全部だ」
「……そうか」
まあ、一つ「課題」が増えたとは言え、別に、たいしたことでは無さそうなので、少しホッとした。
「……あっ!」
「な、何っ……?!」
それ、やめろよ。
心臓に悪いわ。
「隼人、お前の『死んだ記憶を思い出す』という課題だが、それについての『具体的な方法』が載っているぞ」
「『具体的な方法』?」
て言うか、今、みつけたのかよ。
せめて、予習はして来いよ。
「うむ。このアナザーワールドには、お前の前世のときの記憶、通称――『記憶のカケラ』を『管理している者』がいるらしい」
「俺の……前世の……『記憶のカケラ』?」
俺の記憶は今、他人に『絶賛管理中』かよ。
俺の『前世のプライバシー』筒抜け過ぎ。
「ああ……。お前の前世の『記憶のカケラ』を管理している者は、この世界では『管理している者(アドミニストレーター)』と呼ばれているらしい」
「『アドミニストレーター』……?」
「うむ。なので、お前が『この世界で生活する』というのは、具体的には『このアナザーワールドにある『学校』に通いながら、『前世の死んだ原因』を思い出すため、この世界のどこかにいる『管理者(アドミニストレーター)』に会い、お前の前世の『記憶のカケラ』をもらい受ける……これが、お前が『この世界で生活する』という意味になるようだ」
うーむ、なんだろう。
俺は、今、シーナの話を聞いて若干、『違和感』を感じた。
しかし、その『違和感が何なのか』というところまではわからなかった。
「ま、まあ、とりあえず、このアナザーワールドでやることはわかった。それじゃあ、まずは『学校』に向かえばいいんだろ?」
「うむ。そうだな」
「……で、その学校はここからどうやって行くんだ?」
「まあ、歩いてだろうな」
「じゃあ、早速、行こうぜ。とりあえず、ここにいても何も始まらないし……」
「うむ。そうなんだが……」
「? どうした?」
なんだか……「嫌な予感」がする。
「その『学校』の場所を教えてくれ」
「いや、俺に聞くなよっ! て言うか、『学校』の場所、知らねーの?」
「『知らない』のではない。このメモ帳に載っていないだけだっ!」
それを『知らない』って言うんだよ。
うーむ、これはマズイ。
「そ、そのメモ帳に『学校の名前』とか書いてないの?」
「学校の名前は書いてあるぞ……えーっと、『王立中央魔法アカデミー』という学校だ」
「王立中央………………魔法?」
『魔法』? 今、『魔法』っつった?
「うむ。どうやら、このアナザーワールドでは『魔法』が存在するようだ」
「ええっ! そうなの?」
「まあ、地球にも『魔法』くらいあったろ?」
「ねーよ」
「そんなのお前にはわからないだろ? なんせ『前世の記憶』が無いんだから」
「記憶が無いのは『死んだ原因』と『身近な人の記憶』くらいで、『地球にいたこと』や『地球で暮らしてたときの常識』みたいなもんはちゃんと覚えているんだよ」
「何? そうなのか?」
「そうだよ。お前の上司はそんな情報も教えてくれてないのかよ?」
「えー……あったかな~?」
と、ここでシーナは、メモ帳を開き、マジマジと見つめた。
「あっ! 書いてあった。ホントだー」
こいつ、試験受からねーだろうな……たぶん。
作品名:アナザーワールドへようこそっ! 第一章 【002】 作家名:mitsuzo