kに捧ぐNの言葉
この世界の誰よりも。
君は、今まで『人間』扱いをされなかった僕に優しく接してくれました。
その優しさに、その優しさを与えられる度に、僕の心は救われました。
君以上に、誰かを愛することなんて、この先一生無いでしょう。
そんな風に思いました。
君になら、全部、僕の全部をあげても良いくらいに好きでした。
と、思っていたんです。
でも、君の周りには、たくさんの人がいて。
僕なんかの声は届きそうになくて。
それが悔しくて。
だからでしょうか。
僕は、飼い犬の演技を始めました。
ほかの誰でもない、君の犬。
君だけの犬。
君がいないと、何もできない駄犬。
君がいないと、死んでしまう寄生獣。
そうして、君の気を引くしか、僕に手段なんてありませんでした。
そんな風にしか、君の気を引くことができないと諦めていました。
好きです。
どんなに惨めな役に、身を落としても。
君が此方を向いてくれるのならそれで良い。
好きなんです。
歯止めが、効きそうにないくらい。
どうしようもないんです。
好きすぎて。
君の笑顔が、仕草が、声が、全てが。
ねぇ、君からもらった一の幸せから全てが始まったんだ。
そして、僕は十も百も千もすっ飛ばして。
君の全が欲しかった。
愛していたんです。
この世界の誰よりも。
君以上に、誰かを愛することなんて。
一生掛かっても有り得ないって。
思っていたんです。
でも、どうやら、君にとって僕は。
そんなに必要じゃなかったらしいね。
さよならを言わないのは、君の優しさでしょうか。
必要ないと言わないままなのは、憐れみでしょうか。
好きでした。
愛していました。
さようなら。
もう、二度と会うことはないでしょう。
ありがとう。
きっとこの先、一生を懸けても。
君のことは、忘れない。