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瀬間野信平
瀬間野信平
novelistID. 45975
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火付け役は誰だ!(最終回)

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「ところでなんだけどキラキラネーム。」
「そのあだ名は忘れてたのかと思ったが何だ。」

現在は朝の7時。
覆水と瑞が色々な荷物を部屋に展開(それに伴った俺の生活範囲の極端な縮小)し終わり、家事が済んだ頃覆水が口を開いた。
妖精二人は今延々とトランプで遊んでいる。
『…炙り出しでの模様替えは反則。』『ふやかして模様消すのもだよ!』
などと聞こえてくるが目線を向けてはいけない怒ってもいけない、今こそ時代は省エネへ。

「な、に、か、他に忘れていることがあった気がしない?」

その声に気づいて向き直れば覆水はこちらに顔を近づけ満面の笑み。
残念ながら俺の脳にこれ以上やることは思い当たらないしやれることも思い当たらない、よってびくびくしながらも正直に答える。

「何かあったか?」
「…やっぱり忘れてるか。」

先程の満面の笑みは何だったのかは分からないが、少なくとも覆水にとっては良いことを思い出したらしい。
判断基準は今の覆水の顔、満面の笑みからほくそ笑みへ、悪い顔してやがる。
本当になんだか思い浮かばない、このまま分からないのも引っ掛かるから聞いてみたいのだが

「あ、思い出さなくていいやっぱり。」

とも言われては聞くに聞けない。
どうやら後ろを向いた覆水が『このまま勉強すれば勝てる』とボソッと嬉しげに呟いていたのがヒントな気がするのだが皆目見当がつかない。
何か他に勝負でもしたか?

因みにこのようにテストで勝負することを忘却の彼方に飛ばしていた俺は、最初のテストが終わった直後にこれに気付くことになる。

「そうだそうだ、後ちょっと見せたいものがあるんだけど。」
「また悪い顔してるぞ。」
「悪い顔なんてしてない!!これがデフォルト…っておい!!」

見事なセルフツッコミ。

「それで?」
「まぁ簡単に言えば交渉材料かな?」

そう言いながら覆水が渡してきたのは二三枚の写真。
さらに軽く振られるメモリーカード。
渡された写真には

「ん、どうした青少年、顔が青ざめているではないかね?」
「なんでこんなものが…」
「あのねぇ、警備上防犯カメラくらいどこにでもあるもんよ、気付いて事後処理ちゃんとしてきた事に感謝してほしいくらい。」

端的に述べると俺と穂子の写真だった。
何が俺に冷や汗をかかせているかなんて言うまでもない。
写真の俺はチャッカマンを握っていて覆水の部屋は爆発し、火災報知器が鳴らされた(順番はこの際問題ではない)
立派な前科の証拠写真にしか見えないのだ。

「ちょっと待て俺達は正当防衛だ。」
「でもこれ見たら普通警察は」
「ストップ、タイム。」
「しかもその家から二人も少女を連れ去るなんて前科が増えに増えアタァ!!」

とりあえずこれ以上変なことを口走らないように両手でチョップ。
今の覆水の何が質が悪いって少女を誘拐とかほざいただけなら、家から猫のように首を摘まんで出すつもりだったのだが、メモリーカードのせいで覆水を自由にさせたくもない、上がり込んできたのは向こうなんだけど。
机に肘をつき本格的に頭を抱えながら言葉を捻り出す。

「…何が望みだ。」
「よし呑んだ!!まずはちゃんと午後のお茶ぐらいは出来るようにお菓子と茶葉かな!!」

まずってなんだよと思いながら俺にそれに逆らう術はない。
ニヤリとこちらを見て顔を歪める覆水を見ているともはやどちらが勝ったのか本当に分からなかった。

「それじゃとりあえず、快適な家庭環境をよろしく頼んでおこうかしら?」
「ん?彦どうしたの?汗が凄いよ?」
「…なんでもない。」
「そうか!じゃあご飯頂戴!!ご飯ご飯ー!!」
「空気を読みすらしなかった!?」
「…食後はところてんでよろしく。」
「あ、私カステラ欲しいかも。」

本格的に頭痛が痛い、当社比三倍増し、人数に正比例。
誰かこのかしまし三女衆何とかしてください、家主に何時間労働させるつもりだ労働基準法参照誰かお願い。
片手で頭を押さえながらも、面倒くさくなり三人の首根っこを掴み台所に放り投げる。
少女三人の着地音とふぎゅっという淑女らしからぬ声がした後に三者三様の批判が飛ぶが意に介したら敗けだ。

「…いいか、今から俺は具材になりそうな物を片っ端から調達してくるから下ごしらえ頼むぞ。さらばだ。」

「下ごしらえって何、彦?…行っちゃったんだよ。」
「…机にお箸並べておけば大丈夫。」
「それなら簡単!!だから三分クッキングの下ごしらえってあんなに早いんだね!!」
「…それはちょっと違う。」
「あれ?油って胡麻油で良いのキラキラネーム?」
「…小麦粉も使うから出そう。」
「うえっ!!この小麦粉甘いよ?!」
「ドーナツ用かしらね、こっちは?」
「…辛い、懐かしい海の味。」
「天ぷらは塩辛いからきっとそれだよ!!出しちゃえ出しちゃえ!!」



三人の文句の後半をろくに聞かずに家を出たため少々心配だ。
しかしそれよりこちとら朝7時から四人分の天ぷら具材調達に駆け巡らなければならんのです。

そう一人嘯き、走り去る俺の後ろの部屋からは早くも煙が上がっていた。



≡≡火付け役は誰だ!≡≡