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くせ

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ただ一言、「くせ」と言われたらどんなことをイメージするだろうか。

 
 わたしが思うに、ひとはくせが集まって出来たようなものだ。つまりくせとは自分らしさなのである。
 だれにでもくせはある。そしてだれ一人としておなじくせをもつひとはいない。

くせにはべつの意味もある。上手の対極、要するに下手の意味である。
しかし、わたしはこの使い方が適切だとは思わない。
「ひとはある一定の修練を積むことでくせを克服することができる。」
しかしこの場合、「くせ=自分らしさ」はどこへいってしまうのだろうか。
わたしが思うに、上手も下手もくせのひとつなのだ。つまり「くせ=自分らしさ」に上手だとか下手だとかいう名前をつけたのである。
その点を踏まえて、先の一文を正しい文章に直すと
「ひとはある一定の修練を積むことで上手になることができる。」
となる。
 修練を積んだことで、ひとの個性が変化したのだ。

くせとは、上手、下手に関係なく、だれでも生まれながらに持っていて、修練次第によってどんな方向性へも変化しうる唯一無二の宝物なのだ。
であるから、ひとびとは上手だとか下手だとか安易に言うことによって、「くせ=ひと」の変身の可能性を奪うことにくれぐれも注意しなくてはならない。
作品名:くせ 作家名:スピルカ