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Bhikkhugatika

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一珍獣


 「おまえ、怒るってことあるのか?」彼はふと気づいたというように。
 「ああ、そういうのも、もうずいぶん変わってしまったよ」私もまたふと気づいてそう言ったものの、彼が私をひとりで勝手に侮辱しておきながら子供の無垢さそのままに尋ねていることに思い至ると初めて怒りを発見したが、彼の下らなさはなお私の怒りに勝った。私はただ事象の詰まらなさに打ちひしがれた。
 彼が私を殴ったとき私は私の怒りを表現したが、それは我ながらやめるよう依頼するように聞こえた。「おまえ、ふざけんな!」
 だから彼を威圧することはできなかったが、彼の心に私の依頼を告げることもできなかった。彼はただ私を不思議そうに眺めて、ぼうっとしていた。彼は、かつて私に似たものを見たことがなかったに相違ない。けだし彼において私は遠い国から運ばれてきた一珍獣であったろう。私においてはと言えば、彼は見慣れた退屈な人間であった。自己を見ることのなさ、恣意的な欲求へのこだわり、他者の言辞によって作られた審美眼、すべてが月並みであった。彼が私の心に引き起こすことができたのは、あの自己を見、恣意的な欲求へのこだわりに距離を置き、他者の言辞を自らの内なる知性と照合してのち感得する少数の人々によるそれ、勇気や驚異、心の使い方についての健やかな示唆ではなく、あの多数の人々によると同様の、使い道のない不快さだけであった。そこで私は彼が近づいてくるたびに、できるだけ彼から離れた。
 クラヴを出ると、朝の繁華街には、すでにかの多数の暴力で武装した人々がうろついていた。私はできるだけ彼らから離れようとするのだが、彼らは大軍勢であり、あまりうまくいかない。
作品名:Bhikkhugatika 作家名:RamaneyyaAsu