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関西夫夫  おじやうどん

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土曜の朝というのは、のんびりしたもんで、いつもより朝寝坊する。で、食パンを焼いて、熱いカフェオレをお供に頂くっちゅー優雅な時間になる。なぜかというと、俺の嫁が寝ているから。この場合は、食卓に熱いもんを載せても問題はない。超絶猫舌の男がおらへんから、ヤケドさせる心配もないからや。
 優雅に新聞なんか読んで、タバコを一服して、家事をする。とりあえず、やらんなあかんのは、俺の嫁の食事を作って冷ますということ。冷ましにくいもんの場合は、適温になるのに一時間はかかる。

 関西では、お昼ご飯となると、うどんか中華ソバなんてのが定番で、うちもそういうものが多い。ただし、土曜は、さらに消化に良いおじやうどんが定番となる。
 冷蔵庫の野菜を適当に刻んで、後は鳥肉か牛の切り落としを少々、メインのうどんを土鍋に投げ入れ出汁で煮る。ここまでが、普通の鍋焼きうどんで、煮えてきたら、冷凍しといたごはんを投げ入れ、弱火にして三十分くらい、ことことと煮る。その間に、掃除と洗濯して、ひと段落ついたら、どろどろになってるところへ生卵をひとつ落とし、それを潰して蓋をする。これで完成。いたってシンプルなメニューなのだが、これを冷ますとなると、ここから一時間は放置となる。土鍋は保温効果が高いから、時間がかかる。普通の鍋やと、ぐつぐつ煮込むと焦げるから、土鍋のほうが安全なんで、うちでは、これ。

 この冷ます合間に、掃除の続きなんかやって、終わったら、俺も、こたつで休憩。お菓子食べながら、テレビなんか観て和む。男二人の所帯やと、これといって難しいことはあらへんので、あとは、クリーニングを取りに行くとか出しに行くぐらいのことしかない。

 腹が減った頃に、ようやく一時間が経過。そこで、嫁を起こす。とはいっても、寝起きが非常に悪い嫁なので、ゆっくりと起こす。まずは、声かけ。これでは無反応。次に、身体を揺する。たまに、これで起きることもあるが、普通は、これでも起きない。さらに、顔を蒸しタオルで拭く。これぐらいで、ほよほよと目が開く。
「・・・うーーーー・・・」
「おはよーさん、トイレ行くか? 」
「・・・ねる・・・」
「いやいや、水都さん。寝る前に、しっこしとこうやないか。おねしょは、なんぼなんでも恥ずかしいやろ? 」
 イヤじゃとはいけど、十時間以上、トイレに行かなければ、それなりに溜まっているわけで、担いで運んでトイレに座らせる。そうすると、便器の冷たさで、はっきりと目が覚めるのか、うごうごとトイレから出て来る。
「・・・腰だるい・・・」
「さよか。そら、あんだけ腰、カクカクさせはったら疲れることでしっしゃろ? 」
「・・おまえがさせとんね・・・」
「そやろなあ。ほな、メシ食おか? 」
「・・いらん・・・ねる・・・」
「まあ、そういいなや。おじやうどんしたったから。食わせたるから、まあ座れ。」
「・・いらん・・・」
 スタスタと寝室に戻るのは、いつものことやから慌てへん。土鍋一式を運んで、後から追う。いい感じに冷めたおじやうどんを、椀によそって、寝ている嫁の口の前に匙を出す。
「はい、水都さんや。まんま。」
 おかしなもんで、俺の嫁は情景反射なのか、パカッっと口を開くので、冷まして温度を確認したおじやを口に入れてやると、無意識に、もっちゃらもっちゃらと食う。箸で、うどんは全部、短くするから、そのまんまで、潰れた飯粒と一緒に放り込む。雛鳥に、エサやってる気分なので、大変楽しい。何度かやってると、完全に覚醒して起き上がる。
「・・・今日、なんかあったっけ? 」
「いいや、予定は、これといってない。晩飯、どうするかで外出予定も決めるつもりやった。」
「・・・本屋と・・」
「おう。」
「ドラッグストアやな。」
「ゴムとジェルか。せやな、そろそろ残り少ないし買出ししといたほうがええな。」
「もうええから、花月が食べ。」
「もうちょっと食え。栄養と愛情たっぷり入ってるんやから。」
 匙を差し出せば、水都は、口を開く。すっかり習慣になっているので、気付くまでに量を食わせておく。三分の一食ったら終わり。そこから、俺も食って、昼飯は終わる。
「今日、晩はどうする? たまには外食でもいわそか? 」
「面倒臭い。コンビニの弁当でええわ。・・・・寝る。」
 満腹したら、俺の嫁は、直ちに睡眠体制で布団を被る。まあ、ええのや。今晩までに体力を回復させてもらわんと、今晩も楽しまれへんから。晩は精のつくもんでも食わせたろ、と、スーパーのチラシとにらめっこする。うなぎか焼肉あたりやろうか。いっそ、栄養ドリンクでも飲ませて激しくいたすか。
 いろいろと考えて、俺も嫁の横に潜り込んで、ちょっと昼寝する。人肌で温められた布団は気持ちええので、すぐに眠りが訪れる、はずが。

 ・・・・おい・・・・

 だというのに、余計なことをするアホがいる。人の足に、自分の足を絡めるアホが布団に巣食っていた。
「水都さん? 」
「・・・ちょっと足らんかった・・・追加で頼むわ。」
「さよか。ほな、追加させてもらうわ。夜はコンビニ弁当や。」
「なんでもええ。・・・明日、うなぎでもしばきに行こう。」
「それはええな。」
 もぞもぞと動いている足に足を絡めて、さらに俺の身体を擦っている腕を捕まえて、下敷きにする。
「おまえ、食うたらやるって、どんだけ本能に忠実よ? 」
「なんか、やりきった感がないんや。おまえ、疲れてんねやろ? いつものしつこいのがなかった。」
「そういや、そうかなあ。会議と予算作りで忙しかった。」
 長年、連れ添っているので、愛の言葉とか余計な気遣いはいらんので、お互い直接的に攻められる。一度、体温を上げれば、俺の嫁もやらんと気が済まへんから、積極的や。これはこれで週末のお楽しみなんで、堪能させていただきまっせ。
作品名:関西夫夫  おじやうどん 作家名:篠義