怪物狩り 第1章
大学を退学になってから半年が経った。
オレは、家にもいられなくなり、日雇いのバイトをしながらネットカフェを泊まり歩くという生活をしていた。
そんな生活の中で、オレの人生の中心になっているもの、それは「狩り」だ。
家を出てから数日後、オレはネットカフェでとあるサイトと出会った。
そのサイトとは、『リアル・モンスターハント』という名前のいわゆる闇サイトだ。
このサイトは、『モンスターハント』という大人気狩猟アクションゲームをモチーフにした作りになっており、提示されたクエストを単独もしくは複数人でクリアし、クエストの難易度に応じた報酬を受け取るという仕組みになっている。
サイトの基本的なコンセプトとしては、モンスターペアレントのように、社会生活において社会人としてあり得ない行動をする人間(モンスター)をターゲットとし、社会的名誉等を失わせて社会的に抹殺する(狩る)という内容になっている。
クエストの例としては、以下のようなものがある。
【ターゲット】
セクハラ行為を繰り返す会社員
【成功条件】
●メインクエスト
ターゲットを勤務先の会社から追い出し二度とまともな職に就けないようにする
(報酬100万円)
●サブクエスト
ターゲットを離婚に追い込む
(報酬50万円)
参加登録は、メールアドレス(フリーメールでも可)と報酬振込先の銀行口座さえあれば誰でもできる。
サイト上に提示されるクエストは、基本的にはどこかの誰かがサイトに投稿したものである。
クエストを投稿する場合は、サイトの申込フォームにターゲットや成功条件などを具体的に特定して送信する。すると、サイト運営者がクエストの難易度を査定して報酬額と投稿手数料を決定する。その後、依頼者が報酬と手数料を合わせた金額をサイトに振り込むことで、そのクエストは公開され各プレイヤーが自由に受注することができるようになる。
1つのクエストに参加するプレイヤーは4人までという制限が課されている。当然、4人でクリアすれば報酬は4等分になってしまう。だから、常にソロでクエストを攻略するソロプレイヤーもいるが、数は多くない。
多くのプレイヤーは、基本的に複数人でクエストを攻略する。その場合、クエストに参加するプレイヤー間の人間関係や役割分担が重要になる。なぜなら、クエストの途中で抜け駆けされるなどによって作戦を台無しにされることもありうるし、他のプレイヤーの邪魔をするためだけにクエストに参加しているというプレイヤーも存在しているからだ。そのため、経験の深い参加者ほど特定のプレイヤーとしか組まないという場合が多く、グループを形成している場合もある。
オレの場合も、3ヶ月くらい前からは、同じメンバーでしかクエストの攻略に挑んでいない。
今日も、1日の終りにネットカフェでサイトを確認する。