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白き魔女と禁忌の箱

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黒魔女は恋をした。
しかし、彼女が愛する男には思いを寄せる女がいた。
男の想いは表面的には表れなかったが、ある時、黒魔女はその想いに気が付いてしまった。
男が自分ではない女を好きだったという事実に黒魔女は発狂寸前まで陥った。
もともと自分の莫大な力を制御しきれていない未熟な黒魔女はその力を暴発させ、大好きな仲間たちを傷付けた。
黒魔女の悲しみは自然をも巻き込んだ。
天には暗雲が立ち込め、冷たい暴風が吹きすさぶ。雷が鳴り響き、大地が唸り声をあげ震えたかと思うとその地の奥底より溶岩をも噴出させた。

そこへ現れしは、白き魔女。
命の灯短き己の運命を変えるために黒魔女の力を欲する白き魔女。
生命を司る神性を持った白き魔女は、黒魔女の命を以て、己の使命を全うする。

黒魔女を愛する仲間たちは白き魔女に抵抗した。
黒魔女はきっと我に還る。元の優しい黒魔女に戻ると信じて、仲間たちは黒魔女に呼びかけ、そして白き魔女を遮る。

白き魔女は全身全霊を込めて黒魔女の仲間たちを跳ね除け、黒魔女を手中に収めた。
天が闇に覆われ、大地は唸り声をあげる。
終末の情景は変わらない。

黒魔女を手に入れた白魔女に、世の中の理が襲う。
生死、天地、善悪、美醜、光と闇、正義と悪、希望と絶望、男女、太陽と月、宇宙と元素
その先に待つものは一人の女。
ただ涙にくれる黒魔女だった。

白き魔女は問う。お前の理想郷はどこかと。
黒き魔女は泣きながら答える。そんなの知らない。私は死にたい。と。
白き魔女は語る。お前の力は私のものになる。そうしたらお前は永遠に虚無の中で孤独のままだ。と。
黒き魔女は答える。それならばあなたを食い殺してやる。と。
白き魔女は答える。上等だ。それならば、立ち上がれ。

黒魔女の意識は戻った。
そして同時に天変地異も収まった。
世界に光が戻った。

黒魔女は再び立ち上がり、仲間のもとへ戻っていった。
理想郷を見つけるために。
この忌々しい力を浄化するために。

白き魔女は咳き込み、血を吐いた。
黒魔女を取り込めば良かったのに、しなかった。最後のチャンスだったのかもしれない。
命の灯が更に短くなったが、白き魔女はすべてを受け入れることにした。
白き魔女も希望を持つことに決めた。
作品名:白き魔女と禁忌の箱 作家名:藍澤 昴