ミーシャの冒険 6
・・・よく食べる人だなぁ・・・
ミーシャは西の神の食欲のすごさに驚いた。
とても美味しそうに食べるので、不快ではない。
「ミーシャちゃんもいっぱい食べないと、大きくならないわよ〜」
闇姫はミーシャを見つめながら、楽しそうに言った。
「いや、これ以上大きくなっても・・・」
人間は大きければいい,というものでもないだろう・・・
「いいなぁ・・・」
フローラがミーシャの右肩の上に顔を出して呟く
小さな丸い、殻をむかれたみずみずしい果実をつまみ上げて、フローラの目の前に差し出してみる。
フローラは餌付けをされる犬のようにパクッと食いつく。
もちろん彼女は実体でないので果実がなくなったりはしない。
果実は自然とミーシャの口に入ることになる。
「あ、こんな味だったんだ」
それは甘酸っぱく、つるっと喉を通る。
ふと視線を感じて右を見ると、フローラが顔を真っ赤に上気させてじっとこちらを見ている。
「あらあら、仲が良いこと」
ミーシャとフローラを交互に見ていた闇姫が楽しそうに
「恋人みたいよ、あなたたち」
「え?」
餌付けしているようにしか見えないと思うのだけど・・・
「こっちにおいでなさい、フローラ」
「はい」
フローラはすうっと前に出ると、ミーシャの膝の上に座った。
まるで子供だな、と思った瞬間
風が吹き付ける感覚
むせるような蘭の香り
そして膝にずっしりと重みが・・・
「うわっ」
思わず手を回してフローラの身体を受け止めていた。
しかし、この感触、胸をつかんでいる・・・
フローラは嫌がる様子どころか、後ろ、つまりミーシャに体重を乗せてきてるし・・・
「お、降りなさい」
「そうね、そこじゃミーシャちゃんが食べられないものね」
面白がって放置するかと思った闇姫がミーシャの隣に同じ椅子を出した。
フローラは素直にミーシャから降りて椅子に座った。
「便利でしょ、フローラを呼べばどんな空間でもお花の香りでいっぱいになるから」
「この森限定でしょう」
「いいえ、フローラの分身はどこにでもいるわ。ミーシャちゃんはこの子に好かれているから、どこにでも出てきてくれると思うわよ」
「いつでも呼んで」
少し甘めの成分が入った涼やかな声で
「私の口にした物を食べてくれた人ははじめて・・・」
あ、そういうことなんだ
ミーシャはフローラが顔を赤くしたり、闇姫が恋人みたいと言った理由を理解した。
「ん?」
西の神がフローラに気付いた。
闇姫の目配せで状況を理解したらしい西の神はミーシャに皿を渡した。
「これおいしいよ?」
その皿に入ったピラウを木のスプーンですくってフローラの口の前に運んでみる。
ぱくっ
今度は実際に手応えがある。
か、かわいい・・・