描写練習
喪服を纏った一人の未亡人が夫の別れを惜しんでいる。
棺桶には、来訪者達からの花がそっと添えられていた。
俺は、葬式に出席するのは始めてだが、このように死者を悲しむ人に
どのようにして声をかけていいのか分からず困っている。
なんといえばいいのだろうか。
俺は兄貴にもその兄嫁である翔子さんにも憧れを感じていた。
兄は、頭もよく運のいい男だった。
このような事態になると誰が想像したのだろうか。
今までの運とはなんだったのだろうか。
兄は俺にとって親よりも身近な人間だった。
小さい頃は勉強も教わったしゲームも一緒にやる
仲のいい兄弟だった。
だが30の誕生日をきてすぐだった、
道路に飛び出した子供を助けて死んだらしい。
唯一無二の兄を無くしてしまい俺も正直、ここで泣いてしまいたい。
だが泣くわけにはいかない。
兄貴だってもし俺が死んだとしても泣き顔を表に見せないだろう。 ←
お互いプライドが高く素直に感情を出せない、この場だってそれは同じだ。
兄貴もきっとそうだろう。
だから泣いてはいけない。
泣いてはいけないのだ。
「健二君……」
翔子さんが気を遣ってくれたのか自身が一番悲しいはずなのに俺に声をかけてくれた。
その時だった。
俺がある決心を決めたのは。
兄貴、俺は兄のようには慣れないけど
変わりになれるように頑張るよ。
まだ兄貴の事を考えている翔子さんの手をそっと握った。